「節約すると、自分が消えてしまいそうで」
都内で一人暮らしをする恵子さん(仮名・76歳)の年金は月約22万円。会社員だった夫はすでに他界しており、遺族厚生年金と自身の老齢年金を合わせた額です。持ち家マンションでローンはなく、一般的には「ゆとりある老後」と見られる水準でした。
しかし家計は、常にぎりぎりでした。
「気づくと残高が減っているんです」
通帳を見ながら恵子さんは言います。
原因は明確でした。生活スタイルです。
現役時代、恵子さんは都心の企業で管理職として働き、外出や会食が多い生活を送っていました。移動はタクシー、昼は外食、友人との食事はホテルや百貨店のレストラン。そうした暮らしが長年続いていました。
退職後も、その習慣はほとんど変わりませんでした。
「電車は疲れるし、乗り換えが怖くて」
外出はタクシー中心。近距離でも数千円単位の支出になります。昼食は外で2,000〜3,000円程度。友人とのランチは5,000円前後。週数回の外食が続いていました。
「質を落としたくないんです」
そう言って恵子さんは微笑みます。
恵子さんの月支出は平均すると約27万〜28万円でした。
管理費・修繕積立金:約4万円
食費・外食費:約10万円
交際費:約5万円
タクシー代:約3万円
光熱費・通信費:約3万円
その他:約2〜3万円
年金との差額は月5万〜6万円。貯蓄からの補填が続いていました。
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(2023年)』でも、高齢単身世帯の家計は貯蓄取り崩しを前提とするケースが多いことが示されています。ただし恵子さんの場合、問題は支出水準そのものが現役期の延長にある点にありました。
娘の由美さん(仮名・48歳)は言います。
「母は贅沢してる自覚がないんです。昔から普通の暮らしだから」
