「最後は、好きな場所で暮らしたい」――夫婦の決断
「子どもの近くに住むのが“正解”だと思っていた時期もありました。でも、最後は自分たちの好きな場所で暮らしたいと思って」
そう話すのは、首都圏在住の中村さん夫妻(仮名・ともに68歳)。夫は大手企業を定年退職し、妻もパート勤務を経て年金生活に入りました。2人の年金は合計で月約32万円。住宅ローンはすでに完済し、貯蓄も一定額あります。
「年金がこの水準なら“余裕がある”と言われるかもしれません。でも、老後って“安心の条件”が多すぎて、何を優先するか迷いますよね」
夫婦が暮らしていたのは、郊外の戸建てでした。駅までバス、病院も車が必要。庭の手入れや修繕、冬の寒さもこたえるようになっていました。
「家そのものは気に入っていたんです。でも、階段がきつくなって。夫婦のどちらかが倒れたら、もう回らないなって思いました」
総務省『家計調査(2024年)』では、高齢夫婦のみの無職世帯は、可処分所得平均22.2万円に対して平均消費支出が25.6万円と上回り、平均で毎月赤字になっている実態が示されています。支出が膨らみやすい老後は、固定費の設計が暮らしを左右します。
「戸建ては、住めば住むほど“維持費が読めない”のが怖かったです」
住み替え先は、湾岸エリアのタワーマンション。駅近、スーパーやクリニックも徒歩圏内。24時間ゴミ出し、見守りに近いコンシェルジュサービスもありました。
「便利さはもちろんだけど、“暮らしを自分で回せる”感じが一番大きいです。車を手放しても不安がない」
一方で、タワマンには管理費や修繕積立金がかかります。そこをどう納得したのか。
「ここは“安心の固定費”だと思いました。戸建ての突発的な修繕より、月々の支出が見えるほうが落ち着きます」
