(※写真はイメージです/PIXTA)

中国に進出している日本企業は多く、日中経済は切っても切れない関係です。中国とこれからどう付き合っていくのか。日本はどう主張し、どう伍していくべきでしょうか。ジャーナリストの岡田豊氏が著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社)で解説します。

米中どちらにも依存せず、対等な関係を築く

■「子どもが上海に出稼ぎに行く時代」が来るのか

 

「日本経済がこのまま落ちていけば、我々の子どもや孫の世代が上海や北京に出稼ぎに行って、夜の飲食店で接待する時代が来るかもしれないな」

 

知人のビジネスマンが冗談交じりにこう言います。これが冗談で終わればいいのですが、日々、競争の最前線に立つ企業人の危機感は、ここまで来ています。「日本の衰弱」と「中国の勢い」の2つが同時に進んでいます。

 

「中国は日本を超えた」と自信を深める中国人も増えています。中国系企業で働く日本人も増えていくでしょう。日本人は、英語だけでなく、中国語も使いこなせないと、ビジネスが成り立たない時代が、すぐそこまで来ているかもしれません。時代は、中国との向き合い方を考える新たな局面の到来を日本に告げています。

 

言論NPOは2020年11月、日中が共同で実施した毎年恒例の世論調査の結果を公表しました。中国の印象を「良くない」と答えた日本人は89・7%と高い割合でした。これに対して、日本の印象を「良い」と答えた中国人は過去最高の45・2%に上りました。

 

このデータから、ひとつ想像できるのは「日本が中国に背を向けている間に、中国が日本に積極的にアプローチしてくる」という構図です。相手に背を向けていては、良い成果は生まれません。中国との関係構築は、もはや避けては通れない重要な課題ではないでしょうか。

 

中国とは、真正面から向き合うべき時機を迎えています。「中国人は好きになれないから」と背を向けている場合ではないという局面です。背を向けたままでは、中国の意のままに呑み込まれてしまう恐れがあるからです。

 

コロナ禍前の2019年の1年間に、日本を観光で訪れた中国人は1000万人弱いました。「爆買い」などで話題になる中国人旅行客は日本でたくさんお金を使います。観光庁の公表データによれば、2019年の訪日外国人旅行者全体の推計消費額は4兆8135億円。このうち最も多いのは中国の1兆7704億円で、全体の3分の1を占めました。中国人観光客は日本経済にプラスの効果をもたらしていました。

 

一方、中国に進出している日本企業は多く、日中経済は切っても切れない関係です。「日本経済はすでに中国に呑み込まれ始めている」(大手銀行中堅幹部)といった言い方をする日本人もいます。少々抵抗を感じる言い方ですが、中国は人口が多く経済規模が大きいので、そんな例え方も仕方がないかもしれません。ただ、日本は、中国に「量」で勝ることはできませんが、「質」でなら、あらゆる面において、まだまだ勝負できると信じています。

 

同じアジアの大国、中国とこれからどう付き合っていくのか。日本はどう主張し、どう伍していくのか。日本が本当の意味で呑み込まれないように、日本国内では、資本や投資の規制を増やすことなども検討課題でしょう。中国と対峙するために、親中国ではないアジアの各国と「同盟」を創り、日本がリーダーになる構想も意義があると思います。

 

ただ、敵対や牽制ばかりでは解決しません。相互理解のために、中国人の心に届くやり方も必要なのではないでしょうか。

 

中国との向き合い方は、日本政府だけに委ねるテーマではありません。企業は独自に企業で自考しなければいけませんし、市民も自考する場面が今後、増えていくでしょう。

 

私は、中国のことを考える時、身近にいる信頼できる中国人の知人のことを思い浮かべます。もし国家同士が対立しても、市民同士の友好関係が崩れなければ、それは問題解決への絆になるはずです。

 

■米国と中国のどちらを選ぶのか

 

日本は、アメリカと中国、どちらを選ぶべきだと思いますか。

 

私の答えは明快です。日本は、米中どちらにも依存せず、対立せず、自立した対等の関係を両国と構築すべきです。敗戦後、長く続く「日米同盟」は堅持しながらも、アメリカだけに依存、傾斜した姿勢は日本にとってリスクとなるでしょう。また、中国と向き合う時、日本がアメリカの威を借りるだけでは、自立した国家とみなされず、中国に軽んじられてしまいます。

 

こうした正論を実行に移すには、数多くの難題をクリアしなければなりません。日本にとって最大の課題は安全保障でしょう。これをクリアしなければ、日本は国家として自立できません。自立できなければ、どこかの国に〝寄生〟したまま、生き永らえることになります。

 

どうクリアしていくのか。すべての国民が、自考するべき時が来たのではないでしょうか。

 

岡田 豊
ジャーナリスト

 

 

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本連載は、岡田豊氏の著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

自考

自考

岡田 豊

プレジデント社

アメリカでの勤務を終えて帰国した時、著者は日本は実に息苦しい社会だと気付いたという。人をはかるモノサシ、価値観、基準の数があまりにも少ない。自殺する人があまりにも多い。笑っている人が少ない。他人を妬む。他人を排…

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