(※写真はイメージです/PIXTA)

中国に進出している日本企業は多く、日中経済は切っても切れない関係です。中国とこれからどう付き合っていくのか。日本はどう主張し、どう伍していくべきでしょうか。ジャーナリストの岡田豊氏が著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社)で解説します。

日本はどう対処し、どう行動すべきか

■中国を中心に世界が回り始めた 覇権狙う戦略

 

「2019年初めごろから世界は中国を中心に回り始めた」

 

イギリス系の大手金融機関幹部だった知人はこう言います。世界覇権を狙う中国の影響力は急速に世界各国に広がっています。2008年の北京オリンピックの後、「中国経済は崩れる」と多くのエコノミストらが予測しました。

 

しかし、その予測は基本的に外れたばかりか、その勢いは増すばかりです。「中国はいつかこける」という期待を持っていると、中国のありのままの姿は見えてこないかもしれません。中国から目を背けていると、中国のペースに巻き込まれることになります。

 

もはや、好き嫌い、優越感、劣等感といった感情論は捨て去り、世界の大国、中国のことを虚心坦懐に正面から見つめ、理解しなければなりません。そのうえで、日本はどう対処するのか、どう行動すべきなのかを、ゼロベースで、大胆に、自考する必要があります。

 

中国の世界戦略には、将来を見据えて綿密な計画を立てるという特徴があります。そして、それを実際に行動に移し実現します。ヨーロッパにかけての経済圏構想「一帯一路」の推進。アフリカや中南米各国に積極的に投資する経済関係強化。新型コロナウイルスのワクチンを活用して関係を強化する「ワクチン外交」。

 

G7の一角のイタリアは2019年3月、「一帯一路」構想に参画する覚書を結びました。中国に傾斜する国がG7から出たことは、中国の影響力を物語っています。フランスも中国との経済的関係を強めようという意向を持っていました。中国は、南シナ海に積極的かつ強硬に進出しています。南沙諸島に人工島を相次いで建設し、日本など周辺のアジア各国やアメリカの警戒感が高まっています。

 

中国が将来を見据えて行動する計画性やパワーを目の当たりにしたのは、北極海路への進出でした。地球温暖化で氷が解けて、北極海の海が広がると、航路としての利用価値が格段に高まります。例えば、商業的な輸送ルートが格段に短くなります。さらに、資源開発や安全保障面でも有効利用の拡大が期待されています。

 

この航路に、先行して関与してきたのがロシア、カナダ、アメリカです。中国も1990年代から着目し、北極海の調査を実施。以降、積極的な姿勢を示し、各国が警戒しています。いわば、この北極圏の覇権争いに、日本は距離を置いています。貿易に依存する日本は、経済的な損益の観点から積極的に関与すべきではないかと考えます。

 

自然科学系の学術論文の数で中国が初めて世界でトップになりました。文部科学省の科学技術・学術政策研究所が2021年8月に公表した報告書「科学技術指標2021」によりますと、注目度が高い上位10%の論文の数は中国が4万219本に増え、アメリカの3万7124本を上回りました。

 

前年9位だった日本はインドに抜かれて3787本で10位にダウンしました。また、2019年の研究開発費は日本は約18兆円で3位。1位のアメリカ(約68兆円)、2位中国(約54兆円)に大きな差をつけられています。

 

中国人は人口が多いだけあって、優秀な人材が多い。優秀な中国人は世界的な視野を持ち合わせ、日本にも大勢来ています。

 

ある年、大手コンサルタント会社が日本で人材採用試験をしたところ、筆記試験の成績だけで見たら、中国人が上位をずらりと占めたそうです。この会社はさすがに、中国人ばかりを採用するわけにはいかず、面接試験を通じてバランスを取ったそうですが、中国人個人のパワーも、各国の経済、社会活動などへの影響を強めています。

次ページ米中どちらにも依存せず、対等な関係を築く

本連載は、岡田豊氏の著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

自考

自考

岡田 豊

プレジデント社

アメリカでの勤務を終えて帰国した時、著者は日本は実に息苦しい社会だと気付いたという。人をはかるモノサシ、価値観、基準の数があまりにも少ない。自殺する人があまりにも多い。笑っている人が少ない。他人を妬む。他人を排…

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