(※写真はイメージです/PIXTA)

バイデン大統領の「同盟国との連携、協力を重視」という方針は、別な角度から見れば、「アメリカの利益のために同盟国をしっかりと利用させてもらう」という意味も含まれます。日本にはこれを歓迎する声もありますが、事態はそう単純ではありません。ジャーナリストの岡田豊氏が著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社)で解説します。

米中対立に世界が巻き込まれている

■バイデン大統領「アメリカファースト」加速への懸念

 

バイデン大統領は就任から数時間後、パリ協定への復帰、新型コロナウイルス対策の強化など、トランプ前大統領の政策を次々と覆す大統領令に署名しました。

 

歴史に残る大波乱の大統領選挙。投票が不正だと訴えるトランプ氏は法廷闘争に持ち込み、前代未聞の議会議事堂乱入事件をけしかけます。アメリカは分断を超え、内乱状態に差しかかりました。

 

そんなトランプ氏に有権者の半数近くが投票したことを踏まえると、アメリカ国内外の一部で広がる安堵感に疑念を抱いていました。「アメリカファースト(米国第一主義)」に終止符が打たれるという期待は、裏切られる可能性もあると懸念しています。

 

アメリカの実情は生やさしいものではありません。コロナ禍対策は巨額の財政赤字をさらに拡大させました。巨額の貿易赤字も重くのしかかります。2020年の貿易統計は、サービスを除いたモノの赤字が前年より5.9%増えて9049億ドル余り(約100兆円)と過去最大になりました。国民の経済格差は拡大し、根深い人種差別問題は簡単に収まらないでしょう。

 

生産性は伸び悩み、重要な製造業の停滞が懸念されます。アメリカ人は「自分の国が世界一だ」と思い込む人が多いのですが、思うような仕事に就けず、賃金も抑制されている労働者は多い。たまった不満は、薬物・アルコール依存に向かい、白人中間層には「白人の絶望」という深刻な社会問題が生じています。

 

加えて、アメリカと対立する中国が勢いづいています。中国がGDPの大きさでアメリカを追い抜き、世界トップになるのは時間の問題です。中国の経済力が高まれば、世界における政治・外交の影響力も強まり、バイデン大統領へのプレッシャーとなります。

 

中国がGDPで1位になれば、アメリカが事実上主導している経済や金融などの“国際ルール”を中国が主導するかもしれないという懸念が生じます。そうした中で、バイデン大統領がアメリカの利益を最優先に考える「アメリカファースト」を簡単に収められるのかどうか分かりません。

 

就任から5日後の1月25日、バイデン大統領は政府の調達品についてアメリカ企業の製品を優先する「バイ・アメリカン」の運用を強化する大統領令に署名しました。国内の製造業やその労働者を重視する姿勢です。アメリカのメディアは「トランプ前大統領より保護主義的だ」(ウォール・ストリート・ジャーナル)と論評しました。

 

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本連載は、岡田豊氏の著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

自考

自考

岡田 豊

プレジデント社

アメリカでの勤務を終えて帰国した時、著者は日本は実に息苦しい社会だと気付いたという。人をはかるモノサシ、価値観、基準の数があまりにも少ない。自殺する人があまりにも多い。笑っている人が少ない。他人を妬む。他人を排…

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