郵政改革はアメリカの圧力だったのか
もし日本が本当の意味で自立したら、日本という国家とはどんな姿に変わるのか。どんな新しい世界観が見えてくるのか。自分たちの足で立ち、自分たちの力で国家を守り、自分たちの力で世界に貢献するということはどういう感覚なのでしょうか。
きっと、それはいばらの道になるでしょう。金はかかるし、外交力も高めないといけません。まず、アメリカの核に頼らない安全保障をどう確立するのか、議論に時間がかかるでしょう。しかし、すでに自立を果たした国はどこも、自分たちで考え、決めてきたことなのです。
私たちは、自分の言葉で、自分のことや自分の国のことをきちんと説明し、主張していかなければなりません。そうした過程で、政治も教育も、もっと良くしなければならないという自覚が国民の間に広がっていくのでしょう。調和を大事にし、他人のことを思いやれる日本人は、きっと世界に大きな貢献ができるはずです。技術力があるので、環境問題や経済でも役に立てるでしょう。
世界唯一の被爆国として世界平和に貢献する使命を果たすことも期待されるでしょう。自立した国家に生まれ変わるために、まずは、一人ひとりが自考を始めることです。
■郵政民営化とアメリカの圧力
日本中が大騒ぎした郵政総選挙。実はその背景に、自国の利益を拡張しようとするアメリカの圧力があったことは明確な記録として残っていません。
「昨年の4月26日から現在まで、郵政民営化準備室がアメリカの政府、民間関係者と17回面談を行っているということでございます」
2005年6月。国会で開かれていた「郵政民営化に関する特別委員会」で、竹中平蔵・郵政民営化担当相はこう答弁しました。
質問した城内実・衆議院議員は竹中氏の答弁に対して、「17回ということは、これはもう月に1回はこういう形でアメリカの方で早く民営化してくれと言ってきているということであって、かなりの頻繁な数ではないかというふうに私は思っております」と語りました。
城内議員は、当時の郵政民営化法案の採決で、小泉純一郎首相の出身派閥、森派に所属する国会議員で唯一反対票を投じ、その後の総選挙で自民党の公認を得られませんでした。そればかりか、刺客候補を送り込まれ落選しました。
私は、城内氏が国会で竹中氏から先の答弁を引き出したことに着目しました。アメリカが日本に対して、郵政民営化を事実上、執拗に要求していたことが国会の場で明らかにされたのです。
2005年8月。衆議院で可決された郵政民営化法案が参議院本会議で否決され、小泉純一郎首相は衆議院を解散し、総選挙に打って出ました。いわゆる郵政解散です。
総選挙は自民党が大勝しました。解散前、解散を踏みとどまるよう説得する派閥の領袖、森喜朗前首相に対して小泉首相は「俺の信念だ。殺されてもいいと思ってやっている」と答えたといいます。小泉首相の郵政民営化を成し遂げる意志は固かったようです。
郵政民営化法は10月に成立。様々な変化、改革が起こり、日本に一定の利益ももたらしたと思います。郵便局といえば、私たちに最も身近な金融機関のひとつです。その郵便局で、アメリカの保険会社、アフラックの商品が販売されるようになったことも大きな変化でした。
郵政民営化を求めたアメリカ。その結果、アメリカ系の保険会社が堂々と、私たちの郵便局に進出することに成功しました。私は当時の取材を振り返って想像をめぐらせることがあります。「殺されてもいい……」と言っていた小泉首相の言葉です。殺されるかもしれないと感じるほどアメリカから強いプレッシャーをかけられていたのかもしれないと。
いつか機会があれば、小泉さんに直接聞いてみたいと思います。アメリカは、自国の利益という大義名分があれば何でもするような本能を持った、戦略的で、巧妙で、たくましい国です。
日本が大騒ぎした「郵政選挙」にアメリカの圧力はあったのか?
岡田 豊
ジャーナリスト
↓コチラも読まれています
ハーバード大学が運用で大成功!「オルタナティブ投資」は何が凄いのか
富裕層向け「J-ARC」新築RC造マンションが高い資産価値を維持する理由