(※写真はイメージです/PIXTA)

2016年1月、日本銀行は「マイナス金利政策」を導入しました。マイナス金利政策によって、民間の金融機関が資金を日銀に預けずに、企業への融資や、投資に回すよう促しました。その結果とは。ジャーナリストの岡田豊氏が著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社)で解説します。

日銀「マイナス金利政策」の功罪

■超金融緩和への過剰依存は「ICUで点滴」という異常事態

 

日本が長い間導入している「超金融緩和」は、〝異常〟な状態だということをちゃんと認識したいところです。なぜ、異常な「超金融緩和」を続けるのか。弱っている日本経済を本気で自立させることを避け、目先の対症療法を優先しようとしているからではないでしょうか。

 

2016年1月、日本銀行は「マイナス金利政策」を導入しました。民間の金融機関が日銀に預ける日銀当座預金の一部の金利をマイナスにしました。金利がマイナスになると、理屈上、預けている民間の金融機関が金利を支払うことになります。

 

日銀としては、マイナス金利政策によって、民間の金融機関が資金を日銀に預けずに、企業への融資や、投資に回すよう促しました。このマイナス金利政策は、安倍政権が掲げる「アベノミクス」が目指すデフレ脱却と経済活性化を実現するというのが目的でしたが、賛成、反対の両論がありました。

 

「お金を銀行に預けたら金利の分だけ利子がもらえ、お金を借りたら金利分を上乗せして返済する」

 

そもそも、これが経済の常識です。金利はあって当たり前です。金利があるから、力のない企業が淘汰され、可能性がある企業が生き残るという真っ当な力学が働くのです。

 

異様な超金融緩和の状態ですから、企業は比較的簡単に融資を受けられます。その結果、ずさんな経営を助長してしまうケースも多く、企業の淘汰や新陳代謝が進みにくくなっています。

 

淘汰されるべき企業が居座ってしまう一方、イノベーション(技術革新)につながるようなチャレンジングな企業に融資が回りにくいという現象も起きています。

 

「超低金利では、未来を切り拓く強い企業は生まれにくい」
「超低金利では経済は強くならない」

 

これが私の持論です。未曽有のコロナ禍への対応は別として、金融緩和に依存する日本の姿は末期的な症状かもしれません。

 

金利がほぼゼロに近いため、預貯金をしても利子がほとんど付きません。預金者の手元に入るはずだった利子収入の総計はこの間、莫大な金額に上ります。マイナス金利はある意味、異常な状態ですから、私は「日本経済はICU(集中治療室)に入っている状態」と解釈してきました。にもかかわらず、日本はいまだにデフレを脱却できず、経済は立ち上がってきません。

 

日本政府や日銀は、ゆでガエルのようになってしまったのでしょうか。

 

「日本の将来への閉塞感が強まったのは2013年ごろだ」

 

ある金融当局幹部はこう振り返ります。つまり、アベノミクスがスタートしたころです。大胆な金融緩和に踏み切るために、政府が日銀を“支配”するようになったころを振り返っているのです。

 

日銀が国民のために“正常”な機能を取り戻すのはいつになるのでしょうか。政府には、金融緩和以外にやるべき政策が山ほどあるはずです。早く目を覚ましてほしいと願っています。

 

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本連載は、岡田豊氏の著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

自考

自考

岡田 豊

プレジデント社

アメリカでの勤務を終えて帰国した時、著者は日本は実に息苦しい社会だと気付いたという。人をはかるモノサシ、価値観、基準の数があまりにも少ない。自殺する人があまりにも多い。笑っている人が少ない。他人を妬む。他人を排…

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