(※写真はイメージです/PIXTA)

アメリカのバイデン大統領は、新型コロナウイルスワクチンの国際的な供給を増やすため、WTOによる提案を受けて特許権の放棄を支持すると表明し、これに医薬品業界が猛反発しました。なぜ特権の放棄は実現しなかったのでしょうか。渡瀬裕哉氏が著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)で解説します。

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知的財産権は企業経営に、社会の発展にも重要

財産権が人権の原則として出発し、近現代の憲法解釈で社会との関係が位置付けられてきたのに対して、もうひとつ現代的な発展の過程にあり、近年ますます重要性を増している知的財産権という権利があります。

 

知的財産権は、「人の知的創造活動により生み出されたものに関する権利」と説明されます。一般的に身近で、すぐに思い浮かぶのは書籍や楽曲、絵画など創作物とその著作権ですが、これらは知的財産の大きな枠組みのうちの一部です。

 

知的財産権は、大きく三つの種類に分かれます。一つが著作権、もう一つは産業財産権と呼ばれるもの、三つ目の枠には農作物などの新品種を開発した人の権利も含まれます。

 

このうち、企業活動に深く関わっているのが産業財産権です。発明や発見、アイディア、それらに基づいて開発された新しい技術や製品などについて、発明者や開発者、または企業に一定期間独占権を認めるものです。

 

創作物の著作権は、創作された瞬間に自動的に成立するのが国際的なルールとなっています。一方、産業財産権には特許や実用新案、意匠、商標が含まれ、いずれも申請と審査を経て登録されることによって発生する権利です(一部地域では発明と同時に権利が発生します)。

 

明治時代から大正時代にかけて、海外から新しいものが次々と入ってきた日本では、色々な発明品が生まれました。日本三大発明品と言われるのが、二股ソケット、ゴム底足袋、亀の子たわしです。二股ソケットは松下電器(現・パナソニック)の松下幸之助氏による発明です。

 

ゴム底足袋は、日本にゴムが輸入されるようになった明治時代に登場したゴム底の地下足袋を改良し、足袋に縫い付けなくてもゴム底が剥がれないようにしたものです。石橋徳次郎・正二郎兄弟の考案により開発されたもので、石橋正二郎は後のブリヂストンの創業者です。亀の子たわしは西尾正左衛門の発明品で、亀の子束子西尾商店は現在まで続いている老舗となっています。

 

この三大発明品は、いずれも明治時代から大正時代にかけて開発されたもので、当時の特許や実用新案を申請し、登録されていました。

 

日本の特許制度は、明治18年(1885)の専売特許条例から始まります。条例を起草したのは、後に大蔵大臣や総理大臣を歴任することとなる高橋是清です。日本の制度は欧米を参考に作られました。欧米の特許制度の基礎となったのが、1624年に成立したイギリスの専売条例(Statute of Monopolies)です。この条例は、18世紀半ばから始まるイギリスの産業革命に大いに寄与したと言われています。

 

特許制度は、新たな発明や発見にもとづく有用な技術を公開した際、一定期間の独占権を与えることによって発明者や技術を保有する企業を保護する仕組みです。多くの資金や労力をかけて開発した技術が盗まれたり、無断で模倣されたりすれば、せっかく新しい発明や発見で得られるはずの利益が失われてしまいます。そのようなことが横行すれば、誰も新しいことを試さなくなってしまいます。知的財産権にもとづく特許や実用新案などの仕組みは、企業がビジネスを行ううえでも、社会の発展のためにも、とても重要なものなのです。

 

現在、この特許制度は重要性がますます増大しています。経済のグローバル化にともない、先進国と後発国がひとつの製品作りで協力することが増えてきました。先進国は製品の競争力を高めるためにコストを下げ、より安価に市場に供給しようと考えます。そこで、元々先進国にあった製造工場を他の国に移転し、先進国では開発を担い、その他の国々が製造を引き受ける形がビジネスの基本となっています。

 

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※本連載は渡瀬裕哉氏の著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

渡瀬 裕哉

ワニブックス

現在の日本の政治や経済のムードを変えていくにはどうしたらよいのでしょうか。 タックスペイヤー(納税者)やリスクを取って挑戦する人を大事にする政治を作っていくことが求められているといいいます。 本書には「世の中に…

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