(※写真はイメージです/PIXTA)

TPPや日欧EPA、アメリカとのFTA、RCEPまで含めて、ありとあらゆる経済連携協定にすべて加盟している国は、日本しかありません。日本の凄さはこうした自由貿易や経済連携協定のハブになる国なのです。渡瀬裕哉氏が著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)で解説します。

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TPPは加盟国間の関税を原則全面撤廃

■国際貿易協定のハブ・日本、日本への投資が勝利の鍵

 

日本の貿易は、歴史上主に中国大陸とその周辺で行われてきました。戦国時代にはスペインやポルトガルを中心に西洋文化との出会いがありましたが、江戸時代以降の200年あまりの間、対外交易は制限されています。

 

幕末になり、マシュー・ペリーが黒船艦隊を率いて来航し、バタバタ騒ぎの末に日本は日米修好通商条約を結びます。日本のバタバタはその後もまだまだ続きますが、この条約の批准書を交換するため、江戸幕府の軍艦、咸かん臨りん丸まるは日本の船として初めて太平洋を渡りました。

 

実は、ペリーの黒船艦隊は、アメリカ東海岸のノーフォークから大西洋を渡り、アフリカ大陸沿いに喜望峰を回って、インド洋、南シナ海を経由し陸伝いに航海して日本にやって来ます。ペリーの来航時は、太平洋航路がまだ十分に整備されていなかったのです。

 

1860年1月19日、批准書を携えた遣米施設に随伴した咸臨丸は浦賀(品川)沖を出航し、翌1861年2月22日にアメリカ西海岸のサンフランシスコ港に入港します。咸臨丸に乗っていたのは、二十代の福澤諭吉、艦長の勝海舟、ティーンエイジャーの頃に遭難しアメリカで学んだジョン万次郎が通訳兼技術指導といった歴史上の有名人たちをはじめとする一行です。

 

幕末の日本がアメリカとの貿易を始める頃、最前線にいた人たちです。太平洋に商用の定期航路が開かれるのは、このときよりさらに30年近く後になってからのことでした。

 

それから160年あまり経った現在、太平洋をぐるりと囲む形で、ひとつの貿易協定ができました。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)です。日本政府のホームページでは、環太平洋パートナーシップと表記されています。太平洋地域の自由貿易、自由投資に関するルールを決めましょうというものです。

 

元々はシンガポール・ニュージーランド・ブルネイ・チリの4か国が集まり、太平洋地域に高水準のルールを決めて貿易や投資を自由に行おうという話し合いをしていたことから出発しています。バラク・オバマ政権時代にアメリカや日本が後から加わりました。

 

アメリカはドナルド・トランプ大統領のときに離脱し、2018年12月、日本、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの11か国が参加して発足します。

 

最近はイギリスが参加を検討しています。イギリスはEUから離脱しましたし、大英帝国時代の版図だった太平洋の島が現在も海外領土として残っており、太平洋地域にも伝統的に関わりがあるのです。

 

自由貿易に関する国際協定には、これまでもFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)といった枠組みがあります。TPPがそれらと異なるのは、まず多国間の協定だということです。アジアやアメリカには数か国が参加して締結する地域FTAもありますが、日本は伝統的に特定の国と二国間の交渉でFTAやEPAを締結することが多かったのです。

 

これに対して、TPPは「みんなで決めたルール」です。この枠組みに入りたければ、どんな大国でもみんなで決めたルールを守ってくださいね、と言えるのです。交渉力の弱い国でも、みんなで集まれば大きな国との交渉ができるようになる仕組みです。

 

TPPの特徴は、例外なき関税撤廃を目指しており、最終的には加盟国間の関税を原則全面撤廃することで、本当に自由な貿易体制を作っていきましょうと謳っていることです。また、サービスや医療、雇用、投資などなど、交易に関わるすべてのルールと仕組みに統一された基準と仕組みを使いましょうとなっています。

 

次ページRCEPは中国を中心とした経済連携協定

※本連載は渡瀬裕哉氏の著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

渡瀬 裕哉

ワニブックス

現在の日本の政治や経済のムードを変えていくにはどうしたらよいのでしょうか。 タックスペイヤー(納税者)やリスクを取って挑戦する人を大事にする政治を作っていくことが求められているといいいます。 本書には「世の中に…

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