絶望の末、終身刑から脱獄!蘭学者・高野長英と「日本の開国」 (※写真はイメージです/PIXTA)

江戸時代末期の蘭学者の高野長英は幕府の対外政策に批判的な蘭学者がいっせいに検挙された「蛮社の獄」に巻き込まれ、理不尽な罪状で終身刑となります。その後、日本はどのように開国をしていくことになるのでしょうか。渡瀬裕哉氏が著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)で解説します。

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モリソン号事件からみる「自由な社会の重要性」

本連載では、民間の活動にもとづく自由な発想、新しいものを生み出す力や可能性がどのように社会の利益となるのか、色々な分野を取り上げて述べてきました。大前提となるのは、自由で開かれた社会です。

 

戦後の日本はもう70年以上も自由主義国のひとつとして、国際社会でやってきたじゃないかと思う人もいるでしょう。では、自由で開かれた社会の何が重要なのか、江戸時代を例に肝を押さえておきましょう。

 

幕末の黒船来航より16年ほど前、天保8年(1837)の夏、モリソン号事件が起こりました。浦賀にやってきた外国船を砲撃し、退去させた事件です。

 

来航したのは広東にあるアメリカ貿易商社、オリファント商会の商船でした。マカオで保護されていた日本人漂流民7名を乗せ、その送還を大義名分に、通商交渉とプロテスタント宣教団によるキリスト教布教の機会を得るため、日本に来航したのです。

 

18世紀の終わり頃から日本近海に来航するようになった外国船に対して、江戸幕府の対応はその時々で微妙に濃淡があります。当初は海岸に近づいた外国船を拿捕・臨検の後に幕府の処断を仰ぐこととなっていました。それが難しくなってくると、幕府は外国船への補給をある程度認めたうえで穏便にお引き取り願う方針に転換します。

 

ところが、19世紀初頭には欧米の捕鯨船が頻繁に出没するようになり、各地で上陸した武装船員と各藩との小競り合いといった事件が起こります。

 

モリソン号事件の当時は、文政8年(1825)2月に発布された「異国船打払い令」のもとで、日本に近づく船は商船・軍船に関わらず無差別に砲撃して追い払うことになっていました。そこで、浦賀奉行の指揮によって沿岸から砲撃し、九州まで退去していったモリソン号に薩摩山川港でさらに砲撃を加え、日本人漂流民ともどもマカオに追い返したのです。

 

当時、民間には海外の情勢に関する情報を取って分析し、幕府に対して提言を出している人たちもいました。渡辺崋山や高野長英といった蘭学者です。二人は、紀州藩の儒学者、遠藤勝助が主宰する研究会に参加していた常連で、ここには幕府の吏僚も出入りしていました。現在で言えば、有名どころの学者が主宰し、民間研究者と閣僚に関係する政府官僚も参加する研究会のようなものです。

 

政府官僚を通じて得た情報を受け、渡辺崋山と高野長英は幕府のモリソン号への対応を批判しました。世間に流布されたのは高野長英による『戊戌夢物語』でしたが、渡辺崋山は『慎機論』と『西洋事情答書(外国事情書)』を著し、ことに『慎機論』の内容は厳しい幕府批判となったため、渡辺崋山は発表を控えます。

 

ところが、この草稿が問題とされ、「蛮社の獄」という事件に至りました。蛮社は南蛮の「蛮」に社会の「社」。当時の西洋文明が「南蛮」ですから、南蛮のことを専門に研究していた人たちや、その集まりを獄に送ったということです。幕政批判という罪状で渡辺崋山は蟄居、高野長英は終身刑になりました。ちなみに長英は脱獄して、各地を転々と流浪することになります。

 

いつの時代も同じですが、偉い人に物事を提言するのは難しいものです。中国の古典に『韓非子』という書物があります。韓非は春秋戦国時代、秦の始皇帝の時代の人で、自分の著書の中で「王様というのはすごくセンシティブだから、提言の仕方を間違えると殺されますよ」ということを縷々述べています。その韓非子自身はというと、始皇帝に殺されてしまいました。政策提言ひとつするにも、言い方を間違えると殺されてしまったり、刑務所に送られたりするリスクを伴う時代があったのです。

 

今でも政策提言には、提言をして為政者の気分を害するとか、時期に合わないとか、提言の内容以外の色々な要素が付きまといます。同じことを言ったとしても採用される場合と不採用になる場合があるので、採用されるようにタイミングを見極める、内容の言い方を考えることも、政策提言をする側の能力のひとつです。

 

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国際政治アナリスト
早稲田大学招聘研究員

1981年東京都生まれ。早稲田大学公共政策研究所招聘研究員、事業創造大学院大学国際公共政策研究所上席研究員。選挙コンサルタントとして知事・市長のマニフェスト作成など公共政策の立案に携わる。その後、創業メンバーとして立ち上げたIT企業が一部上場企業にM&Aされてグループ会社取締役として従事。
現在、一般社団法人「救国シンクタンク」を立ち上げ政策提言活動を展開。また、減税・規制廃止を求める国民運動一般社団法人「一国民の会」代表を務める。
著書に『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか―アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図』(すばる舎)『税金下げろ、規制をなくせ日本経済復活の処方箋』(光文社新書)など多数。雑誌『プレジデント』(プレジデント社)にて連載中

著者紹介

連載「無駄な規制をやめる、税金を下げる」と日本は元気になる!

※本連載は渡瀬裕哉氏の著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

渡瀬 裕哉

ワニブックス

現在の日本の政治や経済のムードを変えていくにはどうしたらよいのでしょうか。 タックスペイヤー(納税者)やリスクを取って挑戦する人を大事にする政治を作っていくことが求められているといいいます。 本書には「世の中に…

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