家賃を下げても「空室は埋めるべき」か
(3)建物の状態
外壁や屋上防水などは修繕に大きなコストがかかります。理想は100万円、200万円程度かけて高く売れるなら直すべきです。
しかし、現実にはお金をかけられる人はほぼいません。私たちも「直せば高く売れますよ」と断言できません。
とはいえ直さなければ、当然その分はリスクとして見なされるので、売却価格は低くなります。
(4)収支確認、残債
基本は相場を見て売却価格を決めるのですが、明らかに残債が相場よりも高ければ、その点も考慮します。また、変動金利なのか固定金利なのかも確認します。
一般的には決められた融資期間よりも早く返すと違約金がかかる場合もあります。特に長期固定金利や全期固定金利で借りていると、違約金が設定されている場合がほとんどです。
例えば、固定10年で借りていて5年目で返すとなったら、返済額の何%かを支払う必要があります。売る可能性があるときは変動金利にしておく必要があります。
いずれにしても自分がどういう金利条件で借りているのか、どれだけ残債があるのかを考え、それでプラスになる、もしくはマイナスとなったとしても受け止められるかを判断します。
■空室は埋めた方が有利?
現状を確認して空室があれば、「空室は埋めるべき」というのが基本的な考え方です。
もちろん、満室物件のほうが人気はあるため、埋めるに越したことはありませんが、空室を埋めるために家賃を下げるくらいなら、空室のままが良いでしょう。
空室がある状態で売却したいときは、家賃保証をつけることをお勧めします。
保証するにあたって、「お金を振り込まなければならない」といったことではなく、その分を値引きするわけです。取引上は、例えば半年間家賃保証をするならば、売買金額からその分を差し引いて決済するだけです。
例えば、3000万円で売りたいけれども、家賃保証で1部屋5万円・2室で、6カ月の保証なら60万円です。
この金額を3000万円に上乗せして、3060万円で「家賃保証します」と売りに出せばいいのです。そうすると、「3000万円で買いたい」と言われることが多いので、そのため「3000万円にするのなら家賃保証はしません」という話です。
あくまでも意味は同じで、売りやすさの問題です。
ただ、3000万円だと利回りは10%台ですが、3060万円では9%台になるといった場合、10%台を維持したほうが売れやすいでしょう。一つではなく、トータルで判断する必要があります。
なぜ家賃保証をするのか。それは、満室の方が売りやすいからです。空室率が少ないほうが金融機関からの評価も高くなりますし、買主さんが安心します。
実際、私たちが売却の依頼を受けたときに聞くのは、家賃収入と大体の場所だけです。
土地や建物の広さも当然聞きますが、それはあくまで補助的な情報に過ぎません。場所と築年数が分かれば利回りが想定できます。あとは評価の問題なので、「そのエリアだったら○%で売れますよ」という話をするだけです。シンプルに「家賃が高ければ高いほど、売買価格が上がる」のです。
したがって、買った瞬間からずっと家賃を上げる努力をすべきです。
また、たとえ売却を考えていなくても、「どうやったら家賃が上がるのだろう?」と考えてみてください。
例えば、空室期間が長いときに「家賃を1000円下げたら今すぐ入ります」と管理会社から勧められたとしても、このとき安易に1000円下げるのではなく、「初期費用を安くする」「2カ月のフリーレントを付ける」といった方法で、家賃を現状維持できるよう工夫するのです。
所有期間は空室を埋めて回すことを考えがちですが、どこかのタイミングで売るかもしれません。そのときのことを考えるなら、1000円下げるよりフリーレントのほうが利回りを維持できます。
くれぐれも「家賃が下がると利回りも下がる」ということを忘れないでください。
新川 忠義
株式会社クリスティ代表取締役
富士企画株式会社代表取締役
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