遺産分割協議の席で話し合いがまとまらず「不動産はとりあえず共有」で着地しているケースは多くあります。しかし、当初は意志の統一が取れていても、時間が経ては変化するのは当然です。「不動産の共有状態」がもたらすリスクについて、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
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親の遺産の「賃貸併用住宅」、きょうだい4人が共有
今回の相談者は、50代の会社経営者の市川さんです。きょうだいで共有している賃貸物件の件で相談に乗ってほしいとのことで、筆者のもとを訪れました。
市川さんは4人きょうだいの末っ子です。市川さんの父親は20年前に、母親は5年前に亡くなりました。母親が亡くなったタイミングで、実家をきょうだい4人で共有するかたちで相続しました。実家は賃貸併用住宅で、全部で8世帯あります。
母親はそのうちの1室に暮らしていましたが、高齢となり施設に入ったタイミングで荷物を処分し、母親の生前から実家すべてを賃貸していました。
母親が亡くなったときには遺言書もなく、きょうだいで遺産分割について話し合ったもののまとまらず、妥協策として不動産を4人で共有することになりました。
満室の賃貸物件…いまは問題なくても、これから先は?
建物は築古ですが、駅近な好立地が幸いして現在も満室であり、家賃は4人で均等に分けています。しかし、長男長女はすでに60代、次女、そして次男で末っ子の市川さんも50代です。いずれは相続が発生することになります。
「いまのところは大きな問題もなく、賃貸経営できています。でも、きょうだいみんな、もう中高年世代です。このままの状態で何年も共有できるとは限らないでしょう? そう考えたら、だんだん不安になってきました…」
会社経営者で資金面にゆとりのある市川さんが、きょうだいの持ち分を買い取りたいと申し出ましたが、だれからもいい返事はもらえませんでした。この先どうすればいいか、市川さんは頭を悩ませています。
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株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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