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継父の遺産、養子縁組していなかった姉妹は相続できず
今回の相談者は、60代の専業主婦の石川さんです。90代の母親の相続のことで筆者のもとを訪れました。
石川さんの90代の母親は、現在老人ホームで生活しています。石川さんの実父は資産家の一族の長男でしたが、石川さんと姉を残して若くして亡くなってしまいました。その後母親は、石川さんの実父の弟と再婚し、2人の弟が生まれました。
祖父の相続のとき、石川さん姉妹は亡き父親の代襲相続人として財産を相続しました。しかし、継父が亡くなったとき、養子縁組をしていなかった石川さん姉妹は相続財産を受け取れませんでした。
母親が相続した、わずかばかりの財産が「大化け」
石川さんの継父の相続では、異父弟2人が財産の大部分を相続しました。配偶者である石川さんの母親より、跡継ぎの立場が優先されたようで、本来なら法定割合の権利は2分の1あるはずの母親は、財産の1割程度のアパートと畑しか相続しなかったのです。
しかしその後、畑は都市計画道路の買収エリアにかかったことで多額の現金となり、アパートの地価も大きく上昇しました。
強欲な弟たち、母親は姉妹に公正証書遺言を残すが…
母親の相続人は石川さん姉妹と、継父の子どもである弟2人です。
「弟たちは父親の相続のとき、本来は母親が相続するべき財産を、母親を飛ばして相続しているのです。ですから、母親のときは遠慮するつもりだろうと思っていたら、〈母親の財産も、当然分けてもらうから〉と口々にいわれまして…」
石川さん姉妹を心配する母親は、弟たちの発言を聞き、自分の預金は石川さんの姉に、不動産は石川さんに相続させるという公正証書遺言を作成してくれました。
「母の気持ちはうれしいですし、本当にありがたいです。でも、このような状況でいざ相続となったとき、本当に問題なく、思い通りの結果にできるのでしょうか。それが心配で…」
石川さんは不安な胸の内を筆者に打ち明けました。
どのような背景があれ、遺留分侵害請求は回避できない
財産評価を確認すると、不動産と預金で約8000万円でした。遺留分は各人8分の1になりますので、弟2人だと2000万円です。
さらに不動産を時価評価すると路線価よりは高くなるため、遺留分も増えていきます。
遺留分が請求されなければ遺言書どおりに相続できますが、石川さんいわく、弟たちは必ず遺留分の侵害請求をしてくるはずということでした。
遺留分を減らす対策をするなら、現金で不動産を購入して評価を下げる方法がありますが、高齢の母親に説明するのは困難ということで、石川さんと姉は、その方法をあきらめました。
「遺留分の額がわかっただけでも覚悟ができました…。今後、相続の段階になったらまたお願いします」
打ち合わせの席で、石川さんは頭を下げられました。金額が確認できただけでも、少し安堵されたようでした。
石川さんの弟たちの性格を考えると、やはり遺留分の侵害請求は不可避のようです。弟たちは父親が亡くなったときにほとんどの財産を相続していることから、母親の相続のときには遠慮してほしいところですが、法律を盾に、もらえるものは請求するとなれば、残念ながら、遺留分請求には対応しなければならないというのが実情です。選択肢を多くするためにも、相続対策は、早めに行うことが重要なのです。
※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
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曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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