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コロナ禍で分かった「実店舗」活用の重要性
やがて、フォロワーのなかから菓子の注文が来るようになったのを機に、ニーマ・コージーは即座に同店初のオンラインショップを開設した。たちまちニーマは周囲が羨むような贅沢な悩みを抱えることになった。動画で取り上げる商品という商品が飛ぶように売れるようになったからだ。ある商品の場合、想定の10倍も売れたことさえある。
ちなみに、2人の作るコンテンツは、決して作品と呼べるほど価値が高いものではない。単におもしろくて個性的というだけである。店舗経営の舞台裏も垣間見られるし、同店が扱っている珍しいキャンディー類の紹介や試食の様子を通して、あたかも擬似体験をしている気分になってくる。
現在、キャンディーミーアップは、ティックトックで45万近いフォロワーを集め、インスタグラムでもフォロワーを増やしている。2人にとって、目下最大の課題は、旺盛な需要に追いつくことだという。
やがて2人は、自分たちの店が販売促進活動を展開するのに完璧な撮影スタジオであり、ストーリーづくりに自分たち自身がなくてはならないキャラクターであると身をもって知った。コージー姉弟は、このスタジオからのメディア発信を通じて、視聴者だけでなく、まったく新しい大きな市場までも開拓できたのである。
■店をメディアに〝化粧直し〟
化粧品ブランドのモーフィー(Morphe)が成長を続けている。かつて化粧品分野でオンライン専業だったモーフィーは、イギリス、アメリカ、カナダで実店舗を展開する計画を2019年に打ち出した。
だが、その実店舗とは、私たちが一般に思い浮かべる化粧品店とはまるで違うスペースだった。本格的な制作スタジオを店舗内に設置し、顧客のコンテンツ制作に活用してもらって、ブランド認知を高めようという狙いもあったからだ。ビューティ分野で活躍する新進のコンテンツクリエイターなら、時間単位でスタジオを借り、スタッフのサポートを受けたり、各種カメラや照明機材を利用したりすることも可能だ。
どのスタジオも、いわゆるイメージチェンジのスペースとしても利用できる。ここで顧客が25分間まで無料でイメチェンのメイクをしてもらったり、新しいメイクのテクニックを習ったりすることができる。
その結果、100本を超えるレッスン動画が誕生し、すべて同ブランドのウェブサイト上で閲覧できる。さらに、影響力のある熱心なコンテンツクリエイターのチャネルから数百本の動画が配信されている。こうした動画投稿者がモーフィーで制作したコンテンツに熱心なファンがつけば、そのネットワーク効果は絶大だ。これがブランディングのキャンペーンとなり、世界の巨大ビューティチェーンを相手に渡り合うことも可能だ。同社では、こうしたスペースを北アメリカと英国の50カ所以上に展開する方針を掲げている。
やはりここでも、店舗こそが、独自の魅力をライブで伝える強力なステージや場になっている。しかもコンテンツ制作の素晴らしいスタジオでもある。実際、パンデミック前に、私もこの考え方をはっきりと打ち出している。自ら経営する会社・リテールプロフェット内に、小売業向けライブストリーミングコンテンツ制作を手がける新規部門を設立したのだ。小売業者からの依頼を受け、週単位で店頭からのライブストリーミング配信を実施するために、店舗をセットやステージに変身させるサービスだ。
わずか1年前までは、そこそこ斬新な取り組みに見えたが、今や誰でも思いつくアイデアになってしまった。パンデミック後の世界では、オフライン、オンラインを問わず、充実したコンテンツ制作の物理的な背景として、店舗を活用することが主流の考え方になったと言える。
ここで重要なポイントは、毎日、世界中で、規模の大小を問わず、小売りの現場でマジックが起こっている点だ。だが、全世界の膨大なオーディエンスに向けて発信するためには、こうした体験を店内に押し込めておく必要はない。どのリテールタイプにもストーリーがあり、どのストーリーにもオーディエンスがいる。
ダグ・スティーブンス
小売コンサルタント
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