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実店舗の評価方法を変える必要がある
■家賃は顧客獲得の新たなコスト
市場ではオンライン化の大きなシフトが始まっていて、それに伴って実店舗が流通チャネルからメディアチャネルへと軸足を移すことはこれまでに述べたとおりだ。
となれば、実店舗の生産性や寄与度の測定方法も抜本的に考え直さなければならない。オンライン販売が2桁成長を遂げている一方、オフラインは1桁台前半で低迷している状況では、実店舗の売り上げが先細りと考えるのは当然である。それは店舗の重要性が低下することを意味するのか。そんなことは絶対にない。ただし、私たちが価値の測り方をがらりと変える必要はある。
私の友人に、レイチェル・シェヒトマンという人がいる。体験型小売りのコンセプトをいち早く実現してみせた「ストーリー(Story)」という店の創業者である。先ごろ私はレイチェルと小売りの評価方法について話し合っていた。レイチェルはこんなふうに説明する。
「人々が多く集まる場所ならどこでも、メディアは有効です。大事なのは、メッセージがあって、オーディエンスがいることなんです。メディアとしてのチャネルを持っているわけですから」
まったくもって彼女の言うとおりだ。1000年前なら、こんなふうに人々が集う場はバザールと呼ばれ、売り手を見つけて必需品を買うことはもちろん、人々が交流し、ニュースや情報を入手する場でもあった。
やがて印刷機が情報流通の効率的な手段となり、新聞が大きな力を持つようになった。ラジオの登場で、情報の即時性も到達範囲も新たな次元に突入した。それからほどなくしてテレビが主役の座を奪い、消費者の情報源もテレビに移行していった。
現在、デジタルメディアがあらゆるライバルを蹴落とし、人々の集いの場として主役に躍り出た。そこで人々は世の中の出来事や新しい動き、今後の見通しを知るようになっている。
ところが、このデジタルメディアのコストが高騰し、その割に有効性の伸びは徐々に頭打ちになりつつある。それだけに、これから10年の生き残りを考えている小売業者は、実店舗という物理的な資産をメディアとして活用するだけでなく、実店舗の評価方法もそれなりに変えていかなければならない。