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郊外型ショッピングモールの跡地利用
■ショッピングモールの役割を再定義する
短期的には、郊外型ショッピングモールの用途転用が相次ぐだろう。実際、2017年以降、ショッピングモールから産業用スペースへの用途転用が増えている。住宅地から近いショッピングモールの地の利を生かし、商品宅配を担う配送センターや倉庫施設への転用が進んでいるのだ。2020年7月時点で、こうしたプロジェクトがアメリカだけで59件も進行していた。
シアーズ百貨店は、各地のショッピングモールに出店していたが、あえなく経営破綻。これを受け、ショッピングモールの中核テナントとしてシアーズが利用していたスペースに目をつけたアマゾンは、2020年8月、すでに報道にもあったとおり、用途転用に向け、モール運営会社サイモンプロパティーズとの交渉に入った。
報道によれば、アマゾンは、シアーズ退去後のスペースを小規模物流拠点に転用する計画だという。このような動きが順調に進めば、アマゾンは配送をさらに迅速化できるうえ、物流コストを劇的に削減できる。
家具量販店イケアの世界各地にあるほぼすべての店舗を所有するインカグループなどは、パンデミックを追い風に、主要都市・近郊の不動産の値下がりを見込んでいる。これは地殻変動の一端に過ぎない。2015年、私の会社はイケアの戦略プロジェクトに関わっていたのだが、その際、イケアが引き続き成長を続けるとすれば、都心部に進出したほうがいいとの結論に達していた。そこで、都心向けのデザインストアのコンセプトを策定した。
これはキッチンや浴室、保管庫のプラン作成業務を主要都市に持ち込み、裕福な若い世代をターゲットにしたものだった。その後、このコンセプトに沿っていくつかのスペースが展開されており、今後も同様の出店が計画されている。イケアの場合、郊外型ショッピングモールも上手に選べば、新たな勝負の駒を手にすることになる。
自然界の食物連鎖では、生物の残骸は別の生物の餌になる。小売業界も同じだ。
一部の非営利団体などが、破綻寸前のショッピングモールを低所得者向け住宅に転用するよう、政府に働きかける動きさえある。ただ、コストの面から言えば、ショッピングモールを長期的に居住できる住宅に改修するよりも、最初から住宅用の建物を建設したほうが安上がりと指摘する声もある。
そう考えると、やはり結論は変わらないように思える。つまり、ショッピングモールは、ポストデジタルの世界に適した産業用途を模索するほうがいい。純粋に消費目的のために存在するショッピングモールは、生き残る可能性があるものの、「ディスカウント系か、高級系か」の二極化の流れから逃れられないだろう。
ただ、最終的には、こうしたコンセプトとて、はっきり主張できなくなる。高級志向とオフプライス志向のどちらも、オンラインで広く普及するからだ。
このようにショッピングモール凋落の現実的な理由はいろいろあるのだが、そのすべての根源とも言うべき重大な真実がある。ショッピングモールに未来がない根本的な原因は、その所有・運営企業がいまだに自分たちが商業不動産業だと信じ込んでいるからなのだ。