(※写真はイメージです/PIXTA)

今、デジタル広告料は、多くのブランドにとって顧客獲得の手段として非現実的な水準にまでつり上がっています。リアル店舗は、商品流通チャネルからメディアチャネルへと変容し、パンデミック後の世界では、メディアチャネルとしての役割がますます重要になると指摘します。なぜでしょうか。ダグ・スティーブンス氏が著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)で解説します。

あなたにオススメのセミナー

    【関連記事】会員すら知らない「アマゾンプライム」の多すぎるメリット

    商品流通チャネルからメディアチャネルへ

    ■あなたの店をメディアに変えろ

     

    私と面識のある方ならご存じだろうが、少なくとも2015年以降、私は満月に向かって遠吠えをやめない狂犬のごとく、小売業界にやがて訪れる変化を唱え続けてきた。どうやら遠吠えをやめてもよさそうだ。ついにその変化が訪れたからだ。どういうことか。

     

    新型コロナウイルスの感染拡大を受け、小売業界は、実店舗が混乱に弱い現実を突きつけられた。実店舗が商品流通の信頼できる手段として使い物にならないことを思い知ったのだ。パンデミックはもとより、社会不安や気候変動、悪天候など、今後、実店舗にいかなる困難が降りかかっても不思議ではない。また、実店舗はどうしても営業時間や交通の面で制約があり、デジタル社会になってますます不便な存在になりつつある。

     

    だが、正直なところ、実店舗というものは、全盛期でさえ、顧客の手に商品を届ける手段として何かと問題を抱えていたのである。営業時間がどうしても限られているし、運転資金や人件費も必要とあって、その分、収益性が割を食う。最低限の売り場づくりに取り組むことを考えると、ラックや棚を埋めるために過剰な在庫を運び込む必要もあった。すると値下げや利益減少につながり、しかも破損品や減価償却、万引き・盗難などで余計に悪化する。

     

    だが、こういうことがあっても、実店舗というスペースの圧倒的な価値が否定されるものではない。もう1回言おう。こんなことで、実店舗スペースの価値は否定されないのである。それどころか、こういう状況だからこそ、実店舗の変容・パワーアップにつながるのである。

     

    店舗は、商品流通チャネルからメディアチャネルへと変容し、パンデミック後の世界では、メディアチャネルとしての役割がますます重要になる。

     

    今、デジタルメディアのコストは、多くのブランドにとって顧客獲得の手段として非現実的な水準にまでつり上がっている。たとえば、2019年にアウトドアウェア販売のアウトドアヴォイシズは、デジタルメディアチャネルによる顧客1人当たりの獲得コストが上昇していて、新規顧客が商品を購入してくれる売り上げ機会が吹き飛ぶほどになっていると指摘している。

     

    2018年にアメリカで実施された調査によれば、デジタル広告支出は前年比21%増で、その影響で1クリック当たりの平均コストも前年比17%増となった。しかも、悲しいかな、実際のクリック数は7%増にとどまっている。クリック数7%増のために広告支出を21%増やすようなことを平気で続けられるCFOがどこにいるだろうか。

     

    次ページフェイスブックの広告料は2倍以上に上昇

    ※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

    小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

    小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

    ダグ・スティーブンス

    プレジデント社

    アフターコロナに生き残る店舗経営とは? 「アフターコロナ時代はますますアマゾンやアリババなどのメガ小売の独壇場となっていくだろう」 「その中で小売業者が生き残る方法は、消費者からの『10の問いかけ』に基づく『10の…

    人気記事ランキング

    • デイリー
    • 週間
    • 月間

    メルマガ会員登録者の
    ご案内

    メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

    メルマガ登録