会社の指示ではなく現場の判断という意味
その昔、私が介護職員だったころの話です。体験入居があると、次のような指示がホーム内に飛びました。
「205号室のAさんは本日から10日まで体験入居です。対応が気に入っていただければ、そのまま本入居になります。逆に、対応が気に入らなければ、本入居にはなりません。なお、その場合、私たち介護職員に責任が生じます。くれぐれも、本入居にならない、ということがないように、しっかりと介護支援をしてください」
そう言って、Aさんに対する細かい情報と指示を介護職員全員で共有します。
さらに、数日間の話なので、なるべく、そつなく対応できる優秀な介護職員がAさんの対応に選抜されます。つまり、特別待遇、VIP待遇になるわけです。
たとえば、Aさんからのナースコールが鳴れば、最優先で速すみやかに対応することになります。居室に家族がいようものなら瞬時に対応し、点数を稼ぎます。毎日、何度も居室を訪問し、声掛けを行い、丁寧な介護職員であることを演じます。
夜勤帯など、Aさんがいる間だけ、特別フォーメーションを取ることも珍しくありません。そのくらい「特別扱い」をしてホームを気に入ってもらうように努めるのです。
誤解のないように言っておきますが、これは会社からの指示というよりも、現場の判断です。介護職員も人の子です。体験入居など、本入居へのお試し入居の場合、自身の仕事ぶりが評価されるかどうかが試されるという感覚になるため、自然とこのような対応になっていきます。
つまり、人の持つ「承認欲求」というものは、恐ろしいということです。私はまったく興味がないのでやりませんが、多くの人がSNSなどで「高評価」「グッド評価」を求めているのと、同じ気持ちだと思います。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役
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