(※写真はイメージです/PIXTA)

親の状態変化に合わせてホームを住み替えること。これが転ホームです。経年変化や病状の悪化などで、明らかに、入居時と比較し、身体状況が変化している場合は、その対応に得意なホームに転ホームをすることです。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者の小嶋勝利氏が著書『間違いだらけの老人ホーム選び』(プレジデント社刊)で解説します。

入居者の身体状況に合わせたホーム選び

■「転ホーム」がいかに重要であるかを説明します

 

親の状態変化に合わせてホームを住み替えること。これが転ホームです。しかし「あなたは、この本の中で、老人ホームの入居者の平均滞在期間は1〜2年だと言ったじゃないですか? 1〜2年で何度も転ホームをすることは、経済的に見ても不経済ではないのですか?」という声が聞こえてきます。

 

さらに、「ぎりぎりまで待って、老人ホームに入居をしている場合、死に向かって衰ろえていく高齢者をあちこちの老人ホームに引きずりまわすことは本当に良いことなのだろうか?」という疑問が湧いてくる方もいるのではないでしょうか?

 

私は、次のように考えています。転ホームの原理原則は、入居者の身体状況に対し、得意なホームを選んで実施すること。したがって、経年変化や病状の悪化などで、明らかに、入居時と比較し、身体状況が変化している場合は、その対応に得意なホームに転ホームをすること。ここは、ぶれないでいいと考えています。

 

また、経済的な話で言うと、入居一時金といって、入居時に多額の一時金を預け入れるようなホームも、一部の高級ホームに限って言えば、まだありますが、一般的な老人ホームの場合、入居一時金という制度は、無くなっていく傾向にあります。

 

したがって、ホーム探しの選択肢の中から、入居一時金の無いホームを選択するようにすればよいだけです。これにより、経済的な話は、引っ越し費用だけです。

 

ちなみに、この引っ越し費用も、20平米程度のスペースに入るだけの荷物しかないため、特別な経費がかかることはないと考えています。老人ホーム入居者は、実は、今はやりのミニマリストだったということです。したがって、経済的な話は考える必要はないと思っています。

 

次に、衰弱している高齢者を、あちらこちらのホームに連れまわす、ということについてですが、これは少し、考えなくてはならないことだと思います。つまり、何がなんでも転ホームということではなく、状況を見極めるということが重要になってきます。

 

たとえば、当該ホーム側と良好な人間関係が構築できている場合は、無理な転ホームをする必要はありません。最後まで、当該ホームに託す、ということも重要です。たとえ介護看護能力が足りなくても、老人ホームは医療機関ではないため、知識や技術のほかに「居心地」というものが重要になってくるからです。

 

考えてみてください。医療の場合、仏頂面で感じは悪いがスキルの高い医師と、いつもニコニコと感じは良いが、スキルが低い医師とでは、どちらに治療をしてもらいたいでしょうか? また、介護ではどうですか? 介護スキルは高いが感じの悪い介護職員と、介護スキルは、おぼつかないが、いつもニコニコして感じが良い介護職員とでどちらに介護支援をしてほしいでしょうか? ということです。

 

したがって、入居している老人ホーム側と良好な人間関係が構築できているという場合は、入居者の身体の状態を考えながら、転ホームを見合わせる、という判断もありということなのです。

次ページ家族も転ホームの勉強をする必要がある

※本連載は小嶋勝利氏の著書『間違いだらけの老人ホーム選び』(プレジデント社刊)から一部を抜粋し、再編集したものです。

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