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二世帯住宅…売りたい弟夫婦、住み続けたい独身姉
今回の相談者は、横浜市在住の70代の林さん夫婦です。二世帯住宅で同居する独身の姉と、家の売却をめぐってトラブルになっているため、アドバイスがほしいとのご相談でした。
林さんは、結婚当初から自分の実家で両親と独身の姉と同居してきました。会社員だった姉は、その後結婚することなく、ずっと両親と一緒に生活してきたといいます。
「私の父親は20年前に亡くなりまして、その際、長男の私が実家の土地と建物を相続しました。しかし、老朽化がひどいため、父が亡くなってから数年後、二世帯住宅へと建て替えたのです」
二世帯住宅は、林さん夫婦と2人の子ども、そして母親と姉の2世帯が暮らす、完全分離型の構造でした。
「二世帯住宅は、私の世帯と母と姉の世帯、それぞれが3分の2、3分の1の割合で費用を出し合うことになりました。建物の名義は私が3分の2、姉が3分の1の割合の共有です」
当初は、お互い干渉することのない距離感で、快適に暮らしていたといいます。
「老後はうちの子を頼るつもりだと、義姉が…」
ところが、5年前に林さんの母親が亡くなりました。そしていま、林さん夫婦も姉も70代になっています。
「私たち夫婦には2人の子どもがいますが、すでに独立しました。いまの家は、夫婦だけでは広すぎて暮らしにくいのです。それに、老後は子どもたちの迷惑にならないよう、老人ホームに入ろうと考えているのですが…」
老人ホームの入居資金を確保するため、林さんは自宅を売却したいと考えています。しかし、自宅の敷地は林さんの名義ですが、建物には3分の1姉の名義が入っているため、勝手に売却することはできません。
林さん夫婦は自分たちの老後のプランを姉に説明し、自宅の売却について相談しましたが、姉は「私はずっとこの家に住む」と頑なです。それだけでなく、林さん夫婦が予想だにしない発言まで飛び出しました。
「義姉は、自分の老後をうちの子どもたちに見てもらうつもりだというのです」
ずっと静かに座っていた林さんの奥様が口を開きました。
「あの子たちの親である我々が、迷惑をかけないよう四苦八苦しているというのに、ですよ。伯母の立場で面倒を見てもらう気満々って、いったいどういうことでしょうか。私は絶対許せません!」
林さんは怒りを隠しきれない奥様を制止しながら言葉を続けました。
「上の子はすでに家庭を持っていて、じきに2人目の孫が生まれますし、下の子もこの間結婚が決まったばかりなのです。親が子どもの生活を邪魔するようなことは避けたいのです。ましてや姉の面倒を見させるなんて、あの子たちにそんなことはさせられない…」
「高く買い取る」と申し出ても、姉の気持ちは動かず…
老人ホームでの生活を考えている林さん夫婦と、いまの家に住み続けたい姉が隣り合わせで暮らしていて、うまくいくはずがありません。
当初、林さんは姉から建物の権利を買い取る交渉をしたといいます。お金は多めに払うから別の場所で生活してもらえないかと提案したのですが、姉は「私は死ぬまでここで暮らす」との一点張りで、林さんは対処のしようがなく、弱り果てているといいます。
林さんの姉は、ずっと住み続けてきた場所から離れがたいのでしょう。しかも独身で、親族といえば弟家族のみです。弟の一家を頼る気持ちが強いなら、いくら建物を高く買い取るといっても、納得してもらうのは難しいといえます。
林さん夫婦も、数年しか年齢の違わない姉の老後を託されても困りますし、ましてや子どもたちに負担がいくことは、なんとしても阻止したい思いです。とくに林さんの妻は、姉から子どもたちを頼るつもりだと聞いてから、今後一切付き合いたくない、顔も見たくないという強い拒絶の気持ちを持っています。
しかし、いま70代であれば、これからまだ20年近い人生があると想定され、ストレスを抱えたままでいるのは避けたいところです。
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