(※写真はイメージです/PIXTA)

70代夫婦が暮らす二世帯住宅の別世帯には、独身の姉が住んでいます。夫婦は老人ホームに入る資金を作るため、家を売却したいのですが、名義を3分の1所有する姉が納得しません。おまけに姉は、夫婦の子どもたちに自分の老後を託す腹積もりであることが判明し…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

問題を解決する「2つの方法」

筆者は「自宅に住み続けたいという人の説得は、相当難しいと思います」と伝えました。長年住んだ土地や家への愛着は簡単になくなりませんし、お金を多く払うという提案で気持ちが動かないなら、まず話は進みません。

 

完全分離型の二世帯住宅でも、隣に住んでいれば顔も合わせるでしょうし、建物のメンテナンスの相談や協力も必要です。そのような状況で、人間関係が悪ければ大変なストレスです。ましてや、時間がたてばさらに状況の悪化が予想され、問題解決は一層困難になります。

 

そのため、姉を動かすことを考えるより、林さん夫婦が動くほうが現実的であり近道だといえます。そのための方法は2つあります。

 

方法① 土地と自分の建物の持ち分を貸し、住み替える

二世帯住宅から林さん夫婦だけ引っ越し、自分の家を賃貸に出し、収益を老人ホームの支払いに充てます。

 

方法② 土地と自分の建物の持ち分を売却する

土地と自宅の持ち分を売却します。林さんから土地と自宅の持ち分を購入した人は、自分が住むか、もしくは賃貸に出し、姉からは地代をもらいます。

二世帯住宅は、先々を見越さないとトラブルの原因に

林さん夫婦は筆者の提案にうなずき、「いずれかの方法で、できるだけ早く解決したいと思います」と答えると、事務所をあとにされました。

 

同じ親のもとに生まれ育ったきょうだいでも、ものごとの考え方や感じ方は異なりますし、築き上げる家族のかたちもそれぞれです。母親の存在があってこその二世帯住宅だったと推察しますが、いまとなってはひとつの住宅を別世帯で共有することが問題の原因となっています。

 

本来なら弟と姉は別世帯であり、それぞれが自分の判断で行動できるよう、土地を分筆し、建物も別々にするべきだったといえます。

 

二世帯住宅には確かにメリットがありますが、先々のことを考慮せずに決断すると、今回のような問題も起こってきます。あらゆる状況をシミュレーションし、高齢になったときのことも考え、よく検討することが大切です。

 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

【関連記事】「遺留分」とは…割合や侵害額請求、“注意したいポイント”|相続税理士がわかりやすく解説

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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