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「僕がいなくても、君が安心して暮らせるように…」
今回の相談者は、70代の山本さんです。山本さんと夫は再婚同士で、40代で出会いました。夫は死別した前妻との間に子どもが2人、山本さんも先夫との間に子どもが2人います。
双方の子どもたちが家を出たタイミングでの再婚だったため、大きな問題もなく、お互いの家族に祝福されてのスタートだったといいます。
しかし、後期高齢者となった夫は急に体調を崩し、入退院を繰り返すようになりました。夫は山本さんに「もし僕がいなくなっても、君が心配なく暮らせるように遺言書を残したいと思う」と話し、体調のいい日に少しずつ手続きを進めると、数ヵ月前に亡くなりました。
公正証書遺言の内容は、自宅不動産と金融資産の多くを山本さんに、独立して家庭を築いている2人の子どもには、現金の一部を渡すという内容でした。内容については、家族間で共有できていたため、相続手続きは円満に完了したそうです。
「ただ、遺言書には付言事項があったのです。私への感謝の言葉とともに〈自宅は、将来子どもたちに渡すことを希望する〉と書いてありました。夫の遺言通りにするには、どんな準備が必要になるのでしょうか?」
夫の連れ子は、妻名義の財産を相続できない
山本さんは夫の籍に入っていますが、夫の子どもたちとは養子縁組していません。そのため、山本さんの相続人は、先夫の子ども2人だけであり、夫の連れ子は相続人ではないのです。
山本さんと夫の子どもたちとの関係はよく、いまもなにかと気にかけてくれ、電話で話すことも、家族ぐるみで食事をすることもあるといいます。
筆者は山本さんの夫の希望を叶えるために「自宅は夫の子どもに遺贈する」との内容で、山本さんが遺言書を作成することを提案しました。
まずは夫の公正証書遺言に従い、自宅を山本さんが相続して名義換えしたあと、夫の子どもたちへの遺贈のための公正証書遺言を作成します。山本さんの実子には現金を残すということで、すぐに決断して行動に移されました。
「すぐに私の子どもにも話しました。2人とも夫にはよくしてもらったと感謝しているので〈もちろん、当然だよ〉と、すぐ納得してくれました」
山本さんはまだまだお元気で、相続は当分先のことになりそうですが、亡き夫の意思を実現するとともに、自分の意思も実現できる遺言書ができたときは、ほっとしたご様子でした。
妻に渡した財産は妻の所有となるため、夫の遺言書で「妻が受け取ったその先」まで決めることはできませんが、山本さん夫婦のように強い信頼関係があれば、意思を実現してもらうことも可能になります。
※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
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曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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