ある資産家男性は、妻とは別の女性との間に、ひとり婚外子をもうけていました。しかし、深刻な病気になったことをきっかけに自宅に戻り、遺言書を書く決意をします。複雑な事情があるなか「婚外子には相続させない」と決意しましたが…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。
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家庭を顧みず、長年別宅に身を寄せていた資産家男性
今回の相談者は、70代の池田さんです。池田さんの生家は代々の地主で、現在も複数の不動産を保有する資産家です。池田さんはその家の本家長男として親族を取りまとめてきました。
じつは池田さんには、認知した婚外子がひとりいます。池田さんの援助のもと、都内の有名私立大学を卒業してその後大手企業に就職した、現在20代前半の男性です。池田さんは既婚者でありながら、仕事のつながりで知り合った女性に夢中になってしまい、かなりの年数をその女性のそばで過ごしていたのでした。
池田さんは妻との間に40代の長男と二男、30代の長女がいます。いずれも結婚して家を出ています。また、家族全員が婚外子の存在を知っています。
「じつは数年前にがんになり、手術をしました。経過はいまのところ良好ですが、手術以降、いろいろ思うところがありまして…」
池田さんは紆余曲折ありましたが、病気が判明したのをきっかけに女性の元を離れ、また自宅で暮らすようになりました。妻は、そんな池田さんを文句も言わずに受け入れると、献身的に面倒を見たといいます。しかし、池田さん夫婦の関係が再構築できたころ、今度は妻が病に倒れてしましました。
「幸い、妻は治療の甲斐あって回復しました。しかし、私が心労をかけたからだと、子どもたちからは散々責められました。そのけじめとして、しっかり遺言書を残しておきたいのです」
池田さんは妻に自宅と現金を、長男と二男には収益不動産を、長女には現金と有価証券を残したいと考えています。
「認知した子ですが、これまでに母親が暮らしているマンションや、かなりの金銭を贈与してきましたから、私が亡くなったときの分与はなしにしたいと…。理解を得られるよう、しっかり話をしておきたいと思います」
遺言書の付言事項にも、その旨を書き加えることにしました。
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株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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