3人きょうだいの長男の男性は、定年退職後、自分の家族と高齢の母親と一緒に実家で暮らしています。2人の弟は、兄が実家をそのままスライドして引き継ぐことに納得できず、たびたび牽制してきますが、長男も弟たちにはいいたいことがあり…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。
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千代田区の邸宅に暮らす長男「ずっと我慢してきた」
今回の相談者は、70代の池上さんです。高齢の母親の相続について懸念があるとのことから、筆者のもとを訪れました。
池上さんは3人きょうだいの長男で、90代の母親と同居しています。母親は高齢ながら、心身ともにしっかりしていて元気です。池上さんの父親は、末っ子が生まれて間もなく病気で亡くなったため、池上さんの母親ひとりで、3人の男の子を育ててきました。
しかし、池上さんの母親はかなりの資産家のひとり娘だったため、生活に困ることはありませんでした。母親は3人の子を連れて実家に戻り、子どもたちはそこから全員大学を卒業し、大手企業に就職しました。
3人とも就職先ではそれなりのポジションにつき、定年退職後は悠々自適の生活を送っています。
長男の池上さんは、結婚後もずっと千代田区の母方の実家で、母親と同居しています。実家は母親が祖父から相続した広い邸宅で、池上さんの弟たちも就職するまでここで暮らしました。弟たちは結婚後、世田谷区と目黒区にそれぞれ自宅を購入しています。
ここ最近、2人の弟はしばしば「実家のこれから」について話を持ち掛けてくるようになったといいます。2人とも池上さんが母親の実家に住み続けることを不満に思い、遺産を等分に分けることを希望しているそうです。
「ずっと母親の面倒を見てきたのは私です。それに、独身時代はずっと弟たちに生活費を援助してきましたし、その後は母親の生活だって支えてきたのです」
池上さんは穏やながら強い口調で思いを言葉にしました。
「私が何もせず、千代田区の家を手に入れると思ったら大間違いですよ。若いときからいろいろな足かせがあり、あきらめたこともたくさんありました。それに引き換え、弟たちは学生時代から自由を満喫して、好きなことをして生活してきたのです。この年になって、実家をもらうぐらいなんだというのでしょう」
筆者は、池上さんの母親に遺言書を書いてもらうよう提案しました。
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株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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