「もしかしてお金がない?」施設入所を拒否する老父に、中年兄弟が起こしたアクション【相続のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

子どもたちは高齢となった父の健康を心配し、施設への入所を勧めました。しかし父の態度はつれなく、話も聞かなければ、資産状況も明かそうとしません。しかしある日、父親は転倒して入院することになってしまい…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

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高齢父を施設に入所させたいが、資産状況が不明で…

今回の相談者は50代会社員の松田さんです。高齢となった父親の健康と資産状況に懸念があり、筆者の事務所を訪れました。

 

松田さんの母親は数年前に亡くなったのですが、そのショックからか、父親はそれ以後、周囲に心を閉ざしてしまったように見受けられるといいます。松田さんは弟がいる2人兄弟ですが、いずれも共働き家庭で忙しく、まめに父親の面倒を見られないため、高齢となった1人暮らしの父親を心配していました。ある日、思い切って施設への入所を持ち掛けたところ、つれない態度であっさりと追い返されてしまい、ますますコミュニケーションできなくなりました。

 

弟と話し合った結果、父親の態度は金銭的な不安が理由なのでは思い至ったそうですが、話ができず実際のところは不明です。

 

「父は一般企業のサラリーマンでした。両親とも真面目で倹約家で、贅沢した記憶はありません。僕も弟も、大学卒業後すぐに家を出たので、以降の両親の生活状況はわかりませんが、もしかしたらお金がないのかもしれないと思いまして。もちろん、その場合は僕も弟も援助するつもりですが、なにしろ話し合いができないのです」

 

相談からわずか1ヵ月後、松田さんの不安は的中しました。父親は風呂場で転倒し、骨折してしまったのです。父親は入院し、ひとり暮らしできなくなりました。

 

松田さんと弟は父親のいない実家に戻り、資産に関係する書類を探しました。

 

「入院時、父親は仏間のタンスから通帳を出すよういいました。その通帳には200万円ぐらいの残高があり、キャッシュカードが挟まっていました。年金が振り込まれる口座で、このお金で生活していたのでしょう。その後、弟と家を調べたら、寝室のタンスから書類や通帳が出てきました。ざっくりですが、定期預金が4000万円、有価証券が2000万円ぐらいです。父名義の自宅とそれで全財産でしょう。正直、意外と持ってるなと…」

「家探しみたいなまねをして、激怒するのでは…」

松田さんが父親の自宅不動産を調べたところ、評価額は約1500万円でした。そのため、預金や有価証券などを合わせると7500万円以上にのぼります。このままでは相続税の基礎控除を超えてしまい、相続税がかかりそうです。

 

筆者は、金融資産を活用し、生命保険への加入や収益不動産の購入、孫への贈与等による相続対策を提案しましたが、松田さんは浮かない表情です。

 

「父親不在の間に家探しのようなまねをして、激怒するのではないかと…」

「相続対策は親のためでもある」と、理解を促して

筆者は松田さんへ、これを機に説得を試みるよう提案しました。いまから生前対策を行うことで相続税も節税でき、老後のサポートも、父親の財産管理しやすくなると説明するのです。

 

「サポートのためといえば、受け止め方も違ってくるかもしれませんね。現状のままでは数百万円単位の相続税が発生するかもしれないといえば、父も態度を変えるかもしれません…」

 

その後、松田さんは弟と父親の病院を訪れ、話を切り出してみました。勝手に通帳を見たことを詫びながら、相続税のことや、今後のサポートのことを話し、いまなら対策の手段があると説明したところ、静かに話を聞いてくれたそうです。

 

「父も体力の衰えを自覚したのでしょうか。僕たちのことを頼るような態度が見えました。〈僕も弟も父には不安なく生活してほしいし、築いてきた資産も守りたい〉と腹を割って話したことで、わかってくれたようです」

 

松田さんはこれから、弟さんと連携しながら対策を進めていく予定です。

 

相続税の生前対策には、本人の意思確認が欠かせません。資産状況を伝えたがらない親には、本人の意思や気持ちを聞くことで安心してもらい、老後のサポートをする気持ちをしっかり伝えていきましょう。相続対策は子どものためだけでなく、親自身のためでもあるのです。

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 
相続対策専門士

京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。

著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

著者紹介

連載相続のプロが解説!人生100年時代「生前対策」のアドバイス事例

本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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