1人あたりの診察時間は短いのに患者との信頼関係を築ける秘密 (※画像はイメージです/PIXTA)

彩のクリニックは、外来患者が1日平均600人に上り、当然、1人当たりの診察時間は短くなります。それでも医師たちは患者との信頼関係を築くことができるといいます。それはなぜでしょうか、医療法人社団三友会彩のクリニックの実例を紹介します。※本連載は杉本ゆかり氏の著書『患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング』(千倉書房)の一部を抜粋し、再編集したものです。

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患者の信頼を得る早期診断、治療、回復

■彩のクリニックの診断力と治療

 

彩のクリニックの武器は、その診断力である。どこよりもはやく正確に診断を行い的確な治療に導く。原則的には、来院したその日の内に診断し、治療の開始を目標としている。例えば、MRI 検査は大学病院等では予約に1、2週間かかるところ、当日もしくは少なくても2~3日中に検査を行う。この来院から診断までの時間と治療開始の短縮により、治療効果が上がる。もし専門的な治療が必要な場合は、即日専門病院を紹介する。

 

医師にとり、高い治療スキルは当然重要である。しかし、そもそも正しい診断ができなければ、正しい治療は行われない。この診断をいかにスピーディに的確に行うか、知識と持ち前のセンス、そして、それを確定させるための医療機器が必要となる。MRI をはじめとした設備の充実は強みを発揮するための重要な道具である。

 

強みを裏付ける要素として、専門性の高さと診療科の多さが挙げられる。常勤医師6人が保持する専門医、認定医は、日本外科学会認定登録医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本神経学会神経内科専門医、日本脳卒中学会専門医、日本頭痛学会頭痛専門医、日本医師会認定産業医、日本循環器学会循環器専門医、日本整形外科学会整形外科専門医をはじめ、全19種を数える。

 

各医師の専門が異なることで知識や技術を補うことができる。その結果、多様な疾患をカバーでき、時代に適応した慢性疾患に対応できる。これは患者の信頼を獲得できる強みである。患者にとって病状の改善は、継続的な受診先を選択する重要な鍵となる。

 

■患者の絶対的な信頼を得るための要素

 

患者に継続的に受診してもらうための患者インサイトに関する実証分析の結果は、臨床場面でどのように活用されているのか、また、どのような仕組みで行われるのか、杉本院長への取材と患者インタビュー、診療所での調査を通して考察する。

 

彩のクリニックでは、研究結果で示された患者の【問題の解決】と【私(患者)の理解者】、および【身近な人の評判】と【医師との良好な関係】が効果的に行われており、患者の信頼を獲得し、継続的な受診行動を促進させている。また、実証研究結果によると【医師と設備への期待】は、患者の抱く期待と患者が実感する現実との差からくる期待不一致により継続的な受診行動を妨げており、その結果、他の医師にスイッチするドクターショッピング行動を起こす原因となっていた。しかし、彩のクリニックでは、患者の期待に応え、医師の専門性や設備を強みにしている。

 

(1)患者の望む【問題の解決】

 

患者の望む問題の解決は、何よりも病状の回復である。彩のクリニックでは、早期の確実な診断と治療に伴う病状の回復により、患者からの信頼を得ている。

 

例えば、ある患者は数カ月の間、複数の医療機関に通院したものの診断がつかず病気がわからなかった。知人に相談したところ彩のクリニックの評判を聞いて来院した。その患者は、当日の検査で確定診断が行われ、即日で専門病院に紹介されていた。

 

患者は、結果的にがんを患っていたが、スピーディな診断と適確な紹介により、その後、手術も成功し無事退院した。現在は彩のクリニックに戻り治療を続けている。患者は、医師に対し「命を助けてもらった恩人だ」と語っている。

 

彩のクリニックでは、多領域の専門医が勤務しているためフォロー体制が確立されており、患者の問題解決をサポートしている。この診断力の高さと幅広い治療は、医師と患者の信頼関係を築き、患者の継続的な受診行動に大きく影響を与えている。

 

混雑のため、事務員から「担当医以外の他の医師ならば早く診察を受けられますよ」と、声をかけられた患者が数名いたが、患者は「待ってもいいから担当医師でないとダメだ」と断っていた。その際、その患者は隣に座る患者に、「担当医師に病気を見つけてもらい命を助けてもらった。だから他の人ではダメなの」と話していた。一度獲得した信頼は何にも勝る。

 

跡見学園女子大学兼任講師
群馬大学大学院非常勤講師
現代医療問題研究所所長

中央大学大学院戦略経営研究科修士課程(MBA)を首席で修了、同大学院同研究科博士課程にて博士(経営管理)取得。医療福祉専門学校の学校長を経て現職。医師会・医療機関・製薬会社等で講演活動を行う。専門は医療マーケティング論、マーケティング論、企業マネジメント論など。

著者紹介

連載「患者インサイト」患者の深層心理がわかれば医療現場が変わる

患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング

患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング

杉本 ゆかり

千倉書房

「患者インサイト」とは、患者が心の奥底で考えている本音であり、医療に関する意思決定である。この患者インサイトを明らかにすることで、患者への情報提供や情報収集など、患者との効果的なコミュニケーション理解できるよう…

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