診療所ながら外来患者1日600人…地域を支えるかかりつけ医 (※画像はイメージです/PIXTA)

地域医療の核となる、地域密着型の大型総合診療所として地域を支える。外来患者は1日平均600人、最多外来患者は1,000人を数える、地域を支えるかかりつけ医、医療法人社団三友会彩のクリニックの事例を紹介する。※本連載は杉本ゆかり氏の著書『患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング』(千倉書房)の一部を抜粋し、再編集したものです。

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はやく正確に病気を診断、的確な治療に導く

どこよりもはやく正確に病気を診断し、即日に的確な治療に導く。地域医療の核となる、地域密着型の大型総合診療所として患者の心に寄り添い、地域を支える。外来患者は1 日平均600 人、最多外来患者は1,000 人を数える、地域を支えるかかりつけ医の事例を紹介する。

 

1.はじめに

 

診療所に入ると、1階の受付・会計の前にある椅子には朝から多くの患者が座っている。対応する受付のスタッフ数は、診療所とは思えないほど多い。階段をあがると、目の前の広い待合室にはさらに多くの患者の背中が見え、ここでも患者が名前を呼ばれるのを今かと待っている。立って待つ患者や付き添いの家族もいるほどだ。

 

あちらこちらの診察室からは、患者を呼ぶ医師と看護師の声が聞こえる。診察を終えて出てくる患者は笑顔であり、子供の患者は嬉しそうにおもちゃを抱えている。彩のクリニックでは、診療所としては珍しい、午前は医師8人体制で診察を行う8診、午後は5診と圧倒的な数の診療を行っている。

 

本稿では、複数の診療科を持ち、診療所では珍しいMRIをはじめCT、上部下部内視鏡、リハビリテーション室等の大規模な設備を整えて患者を診る、大型総合診療所(無床)の事例を紹介する。彩のクリニックの常勤医師は、全員が専門医を複数保有し続けている。杉本秀芳院長は豊富な症例、経験から、開業医ながらも医師会・製薬会社が主催する講演会で演者としても活躍している。

 

彩のクリニックの理念は、「子供からお年寄りまで、その家族全員に徹底して寄り添い、患者を総合的に診る。地域に密着し、かかりつけ医でありながら高度の診断と治療を提供する、総合型診療所であり続ける。」を掲げ、多くの患者を診療している。

 

武器は、病気を正しく判断する「診断力」だと言える。例えば、患者は症状を訴えながらも、医師による診断がつかずに病気が不明の場合がある。もしくは、正しい診断がなされないため、病状が改善されないことがある。これらが原因で医師を信頼できず、医療機関をスイッチする患者は少なくない。

 

ドクターショッピング行動の要因でも、第1に、治療結果への不満が指摘されている。したがって、診断力は何よりも重要である。診断は患者の話に耳を傾けて症状等を問診し、丁寧に身体的な状況を確認した後、想定される疾患の仮説に伴い臨床検査を行い、最終的に診断を確定する。医師は、患者が訴える症状や身体的な状態を正しく把握し、病気を疑う力があるから的確な検査ができる。その結果、病気は判明し適した治療が開始できる。

 

一般的に治療にフォーカスされがちだが、正しい診断があるからこそ、正しい治療ができる。そして、適切な治療だからこそ、痛みなどの症状が緩和される。また、患者の苦痛は身体的な痛みだけではない。不安などの精神的苦痛が含まれており、これら痛みの緩和は患者が強く求めるものである。仮に、苦痛が続いているにもかかわらず、検査結果は何でもないから問題ないという医師の言葉は、患者にとって決して受け入れられるものではない。

 

本稿の事例では、実証研究において明らかにした、継続受診に関する受診先選択の要因と事例を比較し、どのように実践しているのかを探っていく。まずは、実証結果を示す。

 

受診先選択の研究では、初めて受診するための初回受診先選択の要因は、家族や知人による【紹介・評判】、ならびに、規模、設備、専門性、近さなどの【物理的条件1】が抽出された。その後、継続的に治療を続けるための受診先選択の要因は、【私の理解者】、患者の【感情】、【他者の評価】、【医師の人間性】、医師との【コミュニケーション】、患者の【問題の解決】、【物理的条件2】、【医師への信頼】、【医師に任せる】であった。

 

続いて、ドクターショッピングの研究では、初めて受診するための初回受診先選択の要因である【身近な人の評判】と、継続して治療を行うための受診先選択の要因である【医師との良好な関係性】が、その後の継続的な受診行動に影響を与えていた。

 

一方、初回受診先選択の際、【医師や設備への期待】を抱いて診療所を選択した患者は継続的な受診をせず、医師や医療機関を変えるスイッチング行動であるドクターショッピングを起こしていた。これは、患者の抱く期待と治療結果の現実との差からくる「期待不一致」により起こると考えられる。

 

慢性疾患の場合、患者の継続的な受診は重症化を防ぎ、合併症の早期発見を可能にするため、不可欠である。

 

本稿では、患者の継続的な受診行動を促す仕組みを探ることを目的とし、どこよりも早く正確に病気を診断し、地域の「かかりつけ医」として患者の心に寄り添い、的確な治療に取り組む、診療所の事例を探る。

跡見学園女子大学兼任講師
群馬大学大学院非常勤講師
現代医療問題研究所所長

中央大学大学院戦略経営研究科修士課程(MBA)を首席で修了、同大学院同研究科博士課程にて博士(経営管理)取得。医療福祉専門学校の学校長を経て現職。医師会・医療機関・製薬会社等で講演活動を行う。専門は医療マーケティング論、マーケティング論、企業マネジメント論など。

著者紹介

連載「患者インサイト」患者の深層心理がわかれば医療現場が変わる

患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング

患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング

杉本 ゆかり

千倉書房

「患者インサイト」とは、患者が心の奥底で考えている本音であり、医療に関する意思決定である。この患者インサイトを明らかにすることで、患者への情報提供や情報収集など、患者との効果的なコミュニケーション理解できるよう…

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