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受診患者数は患者の信頼が積み重なった結果
■専門性を高めるための環境
入院している男性患者から話を聞くことができた。その男性は、15、16年前に解離性脳動脈瘤が破裂し、くも膜下出血を起こしている。治療を受けた大学病院の担当医師から、今後、心臓の病気になることがあるかもしれない。何かあったら、その時は所沢ハートセンターに行くようにと言われていた。あそこなら何があっても間違いないと。
その後、5年前に胸のあたりが苦しくなり、心臓かと思ったら胃がんになっていた。別の大学病院で胃全摘の手術をした。さらに5年経ったので、その大学病院で採血したところ、脈がひどく速く心臓の疾患が疑われるため、他の心臓の病院に行くように紹介されてある心臓の病院に行った。しかし、うちでは診られないから他の大学病院に行くように言われた。
ところが、大学病院でも診られないと言われた。男性の入院患者は、「たらいまわしにされて、本当に不安だった。その時、娘が色々調べて、所沢ハートセンターに行った方が良いと言われた。以前の先生からも所沢ハートセンターに行けと言われていたことを思い出し、今回この病院に来た。ここは専門の病院だし、本当によく診てくれるし、常に気を使って病室に頻繁にきて声をかけてくれる。ここにきて良かった。
所沢ハートセンターは、他の病院と比べて判断が早い。来た時にはすぐに専門的な対応をしてくれるので、専門特化した病院は信頼できる。大きな病院だと時間がかかるし、医師がころころ変わり、行くたびに違う先生で、自分のことをわかってくれない。私じゃなくて、病気そのものしか見ていない。
でもここはちゃんとわかってくれる。看護師も対応が良いし、桜田院長が担当だが、朝に晩に顔を出して状況を話してくれる。何よりも状況を細かく説明してくれる。説明してくれて自分がどんな状態か理解できれば、不安がなくなる。もともとは信頼している医師からの紹介だった。信頼する人が信頼している医師なら、任せられる。すべてが安心材料だ。」彼は、安堵した表情でそう語ってくれた。
長年、外来の受診患者数は減っていない。安齋看護部外来主任は、「受診患者の数は、患者の信頼を積み重ねてきた結果だと実感できる。」と、嬉しそうにほほ笑んだ。
■本事例からの学び
(1)事例におけるユニークな視点
●専門特化型だからこそ医療スキルが向上し、チームの成熟度が向上する
所沢ハートセンターは、心臓血管治療に特化して多くの症例を重ね、経験値を高めており、これにより医師の医療レベルが向上するだけではなく、看護師を含めたスタッフも熟練により精度が上がるという点は、ユニークである。
全体のレベルがあがることは、チェック機能が向上し、医療安全の視点からも有効である。専門特化によるオペレーションの熟達は、働く者の自信につながり、多くのメリットを生んでいる。医者が達成したいレベルとスピードを実現するためには、看護師やスタッフのついていく力が必要である。各自はそれを自覚しチームの力を高めるため、自主的な学びが生まれている。この思いは相乗作用を生み、働くモチベーションにつながっている。
結果的に、治療における医師やスタッフ同士のコミュニケーションも促進していた。このコミュニケーションは、心臓血管治療に精通しわかり合っているメンバーだからこそ、速いスピードの中でも意思疎通がとれていた。多くの症例と経験、教育により、医師をはじめスタッフの力量は上がり、チームとしての総合理解が進み、チームの成熟度は増していた。
●心臓血管治療への信念
スピーディでタイムリーな心臓血管治療に臨める環境を整え適切にコントロールすることは、至難の業である。所沢ハートセンターは、自由度の高い小回りの利くコンパクトな病院だからこそ、効果的に運営することが実現できている。満床にし効率的に病院の運営を考えることは、病院の存続のためには重要である。
自由度を上げることは、効率的な運営とは相反することになる。これらの実現は、桜田院長の心臓血管治療に対する信念無くして達成することはないであろう。
緊急の状態では、いかに早く心筋梗塞の治療ができるかが、その後の治療結果に結び付く。桜田院長はさらに外来診察室や急患入口からカテーテル室までの移動時間短縮を考え、最適な治療環境をいまも追及し続けている。