あなたにオススメのセミナー
【関連記事】患者が医師を変える「ドクターショッピング」は何が問題なのか
30床の小規模病院で年間約800件の手術
循環器疾患に専門特化し治療に専念する。最新の医療技術と設備器具を駆使して高度で安全な医療・救命救急治療を行う。年間の心臓カテーテル数は約800件、病院ランキングの心臓病(心カテーテル治療)部門では、大規模な総合病院が名を連ねるなか、常に上位に並んでいる小規模の専門特化型病院である。24時間、夜中でも高度な医療レベルを保ち続け、患者の命をつないでいる。
■所沢ハートセンターの日常
胸の苦しさを訴え、いま来院したばかりの外来患者に着けたモニター心電図の波形が異常を示す。患者は急性心筋梗塞を起こして急変し、心肺停止状態となった。間髪を入れずに心臓マッサージが始まる。一刻を争う事態に、スタッフ間に緊張が走った瞬間、院内のスタッフがあちらこちらで一斉に動きはじめる。その動きはどこかで一元操作されているかのように無駄なく俊敏に流れている。
患者には即座に除細動器(AED)が施され、その後、看護師は患者をストレッチャーに乗せてカテーテル治療室まで走る。入室時にはすでに心臓カテーテル治療の準備が整い、スタンバイしていた医師は、動脈から素早く梗塞を起こしている部位までカテーテルを挿入させる。この段階で、集中治療室では施術後に入院するためのベッドが準備されている。その間わずか20分。看護部の外来主任でさえ、このスピードに驚く。この成熟したチーム感が所沢ハートセンターの真骨頂だ。
病院ランキングに示されている治療実績は、患者が医療機関の実力を知るための1つの指標である。大規模な総合病院が治療別ランキングの上位を占めるなか、所沢ハートセンターは、常に心臓カテーテル部門で上位に名を連ねている。開業時は19床の有床診療所からはじまり、30床の病院に増床して、現在では救急指定を受けている。その治療数は、有床診療所の時代から年間約800例を数える。
一般的に10位以内にランクインする病院の大多数は、300床以上の大規模病院である。その中で、30床の病院が約800例という膨大な症例を執り扱う。「小回りが利く規模の病院だからこそ、この800例が実現できる」と桜田真己院長、谷脇正哲循環器医長をはじめ、安齋紀子看護部外来主任は口を揃える。この小回りが利くとは、検査、診断から治療方針の決定、治療の実行までのスピードが速いことを示し、緊急性の高い疾患にとっては重要な要素である。
30床という小規模病院であるため、医師やスタッフの数は、大規模病院と比べてそう多くはない。つまり、この環境において800を超える症例数をスピーディにこなすことは効率の良さを示しており、いかに医師や医療スタッフのスキルがハイレベルであるかをあらわしている。