1人あたりの診察時間は短いのに患者との信頼関係を築ける秘密

一次医療圏で総合型医療を提供する無床診療所の事例から【中編】

1人あたりの診察時間は短いのに患者との信頼関係を築ける秘密
(※画像はイメージです/PIXTA)

彩のクリニックは、外来患者が1日平均600人に上り、当然、1人当たりの診察時間は短くなります。それでも医師たちは患者との信頼関係を築くことができるといいます。それはなぜでしょうか、医療法人社団三友会彩のクリニックの実例を紹介します。※本連載は杉本ゆかり氏の著書『患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング』(千倉書房)の一部を抜粋し、再編集したものです。

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    安心と信頼は丁寧なコミュニケーションが生む

    (4)患者が望む【医師との良好な関係】

     

    医師は、患者との良好な関係を形成させ、患者からの信頼を得ている。例えば、医師は患者が入室する前にカルテやデータを即座に確認し、患者が診察室に入るのと同時に、患者の名前を親しそうに呼びながら、「Aさん、前回の検査結果は何の問題なかったよ。良かったね、安心したよ。」と笑顔で患者に告げるところから診察が始まる。短い診療時間ながら必ず患者に触れ、聴診、血圧測定、脈の測定、リンパ節の確認を含め、接触と徹底した患者への共感を伝え、患者の安心感を導いている。

     

    この接触行為は、患者との関係性構築のためにも重要である。以前、ある診療所において医師が患者に血圧測定をせず、触診もせず、一切触れることなく、薬だけ処方をして診察を終了した。その際、患者は、何もしてもらっていないから診察料は払わないと訴えたケースがある。接触行為は、患者にとり治療行為であり、信頼と安心につながる非言語的なコミュニケーションでもある。

     

    患者への明確で丁寧な病気や病状の説明も欠かせない。医師は説明において、検査結果表や画像、身体図を患者に見せ、明確に伝えていた。説明を曖昧にする医師が多い中、患者へのわかりやすく丁寧な情報提供は、良好な関係を築く基礎となる。

     

    (5)患者による【医師と設備への期待】

     

    ドクターショッピング行動を導く【医師と設備への期待】は、彩のクリニックにおいて、逆に、継続受診の要因となっていた。専門性と設備は早期の治療に有効な結果を導いており、患者にも承認されていた。例えば、大学病院では検査の予約がすぐに取れず、数週間待たないと予約ができない。

     

    しかし、彩のクリニックでは即日MRIや消化器系内視鏡等の検査を実施し、診断を下し治療をはじめている。その結果、患者の期待に応えているため、期待不一致は起こっていない。

     

    患者の期待が高まる医師の情報は患者に開示されている。常勤医師の医師免許証、学位記、専門医の証明書、海外留学時の研究等はすべて院内に整然と掲示されており、専門性が患者に理解できるように情報提供されている。病気や検査、薬に関する情報も掲示板に張り出されている。さらに、連携がとれる病院の一覧が掲示されている。入院や手術等が必要な場合でも、専門性の高い病院に紹介してもらえることが示され、安心感を導いている。

     

    ここでは、混雑していることもスキルの高さの証明であると患者は認識している。待ち時間の長さは苦痛でありながらも、患者が集り、評価が高い証明であるため、他の医師にスイッチすることはない。患者は、「最後の最後まで私はこの医師に診てもらいたい」と笑顔で語っていた。患者の精神的、身体的な負担は大きい。これらの理解と改善は、医師に対して最大の信頼を導く。

     

    杉本ゆかり
    跡見学園女子大学兼任講師
    群馬大学大学院非常勤講師
    現代医療問題研究所所長

     

     

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    杉本 ゆかり

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    「患者インサイト」とは、患者が心の奥底で考えている本音であり、医療に関する意思決定である。この患者インサイトを明らかにすることで、患者への情報提供や情報収集など、患者との効果的なコミュニケーション理解できるよう…

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