(※画像はイメージです/PIXTA)

患者が「この医師に任せたい」という思いに至った時、熟考的思考の情報処理を覆し、直観的思考の情報処理を行っていた。その時、患者は遠くても待ってでも継続受診を行い、その医師から離れることは決してないという。※本連載は杉本ゆかり氏の著書『患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング』(千倉書房)の一部を抜粋し、再編集したものです。

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    身近な人の情報が意思決定で優先される

    分析手法「グラウンデッド・セオリー・アプローチ」(以下GTA)の調査結果をもとに実務的視点からの検討について示す。

     

    (1)初回受診先選択で患者が重要視する要因

     

    診療所を対象とした初回受診先選択では、第1に、「家族や知人の紹介・評判」による情報が重要視されることが示唆された。なお、インターネットの情報は場所や概要の確認のためであり、患者を理解している身近な人からの情報が意思決定において優先されていた。

     

    杉本ほか(2018)の診療所研究では、患者満足の向上が他者推奨意向に影響を与えることを指摘している。したがって、実務では、家族や知人に診療所を推奨してもらうために、まず、医師は、現在通院する患者の満足を第一に考える必要がある。それが、結果的に紹介や評判を高める策となる。

     

    第2に、専門医取得などの「専門性」は、患者にとり良い治療をしてもらうための熟考的な判断ツールの1つであった。新しい患者の獲得手段として、専門性に関する情報の提供は重要である。実務では、例えば、診療所内の掲示や案内、診療所が独自に情報ツールを作成し、過去の勤務経験、専門性を示す治療実績や、専門医資格などについて、患者が合理的で熟考的に理解できるように情報提供する必要がある。

     

    また、患者に対し医師会での勉強会や学会参加を報告することも、新しい知識を保有している判断材料になる。

     

    第3に、患者は早期に継続受診するか否かの意思決定を下していた。そのため、初回受診の対応は重要であり、その後の継続受診を左右する。したがって、実務において、医師は、新しい患者に対して、初回から患者の情報を把握し、早期に様々な治療を提案し患者に寄り添う必要がある。そのため、初回来院時に受付や看護師が患者に関する情報収集を行い、医師は初回診察から患者に対して積極的に関わる事が重要である。

     

    第4に、患者は、「規模」を重要視していることから、複数の医師・診療科により、治療対象の疾患を広くカバーし、患者に安心感を提供する必要がある。実務では、複数の医師(非常勤医師含め)、診療科が設置できない場合でも、近隣の医師とのサポート体制を組むなど、連携を患者に認識してもらう手立てを取る必要があり、それが信頼性を高めることになる。

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    患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング

    患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング

    杉本 ゆかり

    千倉書房

    「患者インサイト」とは、患者が心の奥底で考えている本音であり、医療に関する意思決定である。この患者インサイトを明らかにすることで、患者への情報提供や情報収集など、患者との効果的なコミュニケーション理解できるよう…

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