(※写真はイメージです/PIXTA)

ビールが増税されると、メーカーは発泡酒、増税されると第三のビールを作って対抗。2020年の酒税法改正でようやく3種類の税額が統一(猶予期間あり)。結局、得したのは誰なのか。※本連載は渡瀬裕哉氏の著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

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    塩の専売は100年近く続いていた

    地ビールは規制緩和の成功例ですが、むしろ問題は酒税の面です。安定的に販売量のある嗜好品なので、しょっちゅう増税されています。また、販売量の伸びている酒類には増税し、売れ行きが下がってきたものは減税するといったことも行われています。

     

    特に1990年代から2000年代にかけてビールに対して増税が集中します。ビールメーカーは麦芽使用量を規定値以下に抑えた発泡酒を開発して対抗します。ところが発泡酒に人気が出て売れてくると発泡酒が増税され、今度は麦芽を使わない「第三のビール」が開発されるという、増税と開発のいたちごっこになりました。このため、ビールやビール系飲料で三種類もの税額ができ、令和2年(2020)の酒税法改正でようやく統一されたところです。

     

    多様なビールを消費者が選べるようになったことと似たものに、塩があります。現在は様々な塩が売られていますが、以前は専売制度によって取り扱える事業者は日本専売公社だけでした。

     

    塩の統制が始まったのは、明治38年(1905)のことです。日露戦争の膨大な戦費を調達するため、財政収入の確保を目的に専売制が導入されます。政府によって統制された物品の収益が戦時の費用に充てられることは、よく行われています。明治政府が初めて専売を導入したのはたばこで、日清戦争後の財政難への対応です。支那事変が始まったときには、工業用アルコールが専売の対象となりました。太平洋戦争が始まると、石油が専売化されています。

     

    昭和60年(1985)、日本専売公社が民営化した後も、塩の専売事業は日本たばこ産業に委託する形で続けられ、塩の自由化が行われたのは平成9年(1997)と、ごく最近のことです。塩の専売は百年近く続いていたことになります。塩の専売が行われていたときには、戦後も専売公社の指導により原料や製法からパッケージのデザインまで決められていたといいます。より良いものを作りたいと思っても、品質を均質化しようとする指導を受ける酪農の話とも似ています。

     

    自由化によって新規事業者の参入が促され、事業者が製法や質にこだわった塩づくりができるようになりました。嗜好品のビールにしても、生命維持や日常生活に欠かせない塩も、自由化によって事業者や消費者への恩恵が増えたのです。

     

     

    渡瀬 裕哉
    国際政治アナリスト
    早稲田大学招聘研究員

     

     

     

    無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

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    渡瀬 裕哉

    ワニブックス

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