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「家での様子」が重要…家族が気づきたいサイン
もの忘れのために予想外のトラブルが続くなどし「認知症かもしれない」と不安になったとき、その不安をすみやかに解消するためにも、誰もがきちんとした診断を受けたいと思うはずです。
しかし残念なことに、今の日本の認知症診療の枠組みは、受け皿こそ増えましたが、内実が伴っているとはいい難い状況です。
頼みの医師が、必ずしも認知症の知識や診療経験が豊富とは限らず、せっかく受診してもその先の長い道が「迷い道」になってしまう恐れがあるということです。
そうならないようにするには、「入り口」選びが大切です。すなわち、信頼できる受診先をいかに見つけるか、ということです。
それにはまず、患者の家族も、認知症という病気についてある程度の知識を得ておくことが大切と私は考えます。なぜかといえば、医師に診せるにしろ、地域の窓口に相談するにしろ、知識があるほど患者の生活の様子を的確に伝える助けになるからです。
認知症は特に「おうちにいるときの患者の様子」が診断や診療の方針を決めるのに重要です。奇妙な言動があったとして、それが時間の経過とともに頻発するようになったのか、程度が大きくなったのか否かが明確になるだけでも診断が変わることがあります。
言動の内容も、いないはずのものが見える幻視や、妄想の有無が診断の決め手の一つになることがあります。それをすべて「おかしな言動」とひとくくりにとらえてしまうと、正しい診断につながらないということです。
残念なことですが、これは医師であっても見逃してしまいがちなのです。
言動の内容を細かく聞かなければならないのに、診察室で一言二言言葉を交わすだけで、「ちょっと受け答えが怪しいね。認知入っているかな」と、その場の所見をもとに決めつけようとする「うわべだけ診断」がまかりとおっているのが現実なのです。
一方、患者本人も、家にいるときと診察室とでは態度が違う、ということはままあります。他人の前に出るとしゃきっとして、自分は大丈夫、と取り繕うケースは、特に認知症初期にはよく見られるものです。
そんなときに、家族が家での様子を的確に話すことが誤診を防ぐポイントになってくるというわけです。
また、何も分からないと結局、周囲任せになってしまうということもあります。
知識があれば医師とのコミュニケーションを通じて、長いお付き合いをするに値するか見極めもつきやすくなります。知識をつけておくことは「自衛」になります。
次からよくありがちな誤解や思い込みを足掛かりに、知っておきたい事柄を解説します。