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オランダ「認知症の人だけが住む街」に感動したワケ
私は病院に勤務し始めてから2年に一度のペースで、海外の高齢者医療・ケア施設へ行き、認知症医療の実状を視察してきました。
認知症の高齢者が施設でどのように過ごしているか、最期の時をどのように迎えているのか、施設づくりの方向性と目指しているケアのあり方など、多くの事例を見てきました。
これまでに訪れた国は、フランス、オランダ、ノルウェー、フィンランド、スウェーデンなどで、世界でも認知症ケアが進んでいると定評のある都市を中心に、10ヵ所以上にのぼります。
そのなかで感じたことは、欧州では「認知症であっても、患者自身の自由と尊厳を認める基本精神が根づいている」、ということです。その精神は、いわゆる最期の看取りまで徹底しているのです。
例えばオランダです。
アムステルダムの南東、ヴィースプ市にあり、世界的に知られている「認知症の人だけが住む街」ホグウェイを訪れたときの感動は今でも忘れられません。
正確にいえば、街のようなつくりの高齢者ケア施設なのですが、スーパーやカフェ、映画館といった商業施設が並んでいる様子はどこから見ても普通の「街」です。入所者は、その街の中であれば自由に外出でき、買い物をしたり寛いだりすることができます。
またホグウェイでは入所者の趣味や価値観、これまでのライフストーリーなどに基づき、似たバックグラウンドの人が近所になるよう配慮しており、サークルなども充実しています。
認知症であっても趣味などを通して人との交流が活発にでき、やりがいや生きがいを感じられるよう工夫されています。
10年ほどの歴史をもつホグウェイは、認知症患者の自由や自立を重んじ最期まで普通に暮らし、自分らしく生きることをサポートする、これからのあるべき認知症ケアの先駆的存在と世界で注目されています。
「現実的に、認知症の人が発症前と同じように生活するのは難しい、それならいっそ、施設の中に『街』を再現しよう」という発想は、世界にインパクトを与え、欧米で追随する国も増えてきています。