(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者に「妄想、幻覚、徘徊」といった症状がみられたら、認知症を疑うことでしょう。医者でも疑い、そのまま「誤診」してしまうことがよくあるといいます。本当は完治も可能な身体疾患なのに、「治らない認知症」と誤診され、適切な治療がおこなわれなかったら…。医療法人昭友会・埼玉森林病院院長の磯野浩氏が、実例とともに解説します。

 

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症状は「妄想、幻覚、徘徊」…認知症か?と思われるが

「認知症が進んでいるようなので診てほしい」と、母娘が受診に来ました。母親は車椅子に乗っていました。

 

母親は長年一人暮らしで、長女が定期的に通い掃除、洗濯などの家事をフォローしていましたが、数年前から誰もいないはずの2階に人が住んでいるなどの訴えが出てきたため、近隣のメンタルクリニックを受診し、認知症と診断を受けたそうです。

 

しばらく投薬治療を続けてきましたが、症状は悪化する一方で、自宅にいるにもかかわらず「家に帰るんだ」とシルバーカーを押して外を徘徊するようになり、近所の人に連れ戻されました。これ以上単身生活をさせておくわけにもいかない、と近隣の介護施設に急遽、ショートステイで入所したとのことです。

 

その期限が切れたので、このまま再び自宅にというわけにもいかず、私のところに来た、……というのがこれまでの経緯です。

 

妄想や幻覚、そして徘徊……ここまでの話を聞くと、認知症で起こり得る典型的な症状、エピソードであり、メンタルクリニックの診断どおり、認知症を発症し数年の間に進んでしまったのかな、と皆さんもそんな印象を受けているかもしれません。

 

ちなみに、メンタルクリニックでは長谷川式検査を行っており、30点満点中15点しかとれておらず、検査上も健常者のカットオフポイントを下回っており認知症が疑われる点数でした。

 

ところがです。実は私は、ここまでの長女の話を聞く「前」の段階で、「これは認知症ではなさそうだ」と気づいたのです。

 

どこで気づいたのか。それは、母親の「外見」です。

次ページ外見でわかった…治療法のある「完治が可能な病気」

※本連載は、磯野浩氏の著書『認知症診断の不都合な真実』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

認知症診断の不都合な真実

認知症診断の不都合な真実

磯野 浩

幻冬舎メディアコンサルティング

超高齢社会に突入した日本において、認知症はもはや国民病になりつつあります。そんななか、「認知症」という「誤診」の多発が問題視されています。 高齢者はさまざまな疾患を併せ持っているケースが多く、それらが関連しあ…

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