おひとりさまでも、在宅死は可能です
介護保険サービスは、その方の収入に応じて1~3割の自己負担額があります。介護度ごとに、支給限度額が定められており、その範囲内であれば、決められた自己負担割合で介護保険サービスを利用できます。
支給限度額を超える介護保険サービスを受けた場合には自費になりますが、医療保険と同じように、あとで払い戻してくれる「高額介護サービス費」という制度もありますから、申請すればお金が戻ってきます。
また、介護ベッドや車椅子なども介護保険サービスでレンタル利用できますし、ポータブルトイレやシャワートイレは、自己負担割合での購入が可能です。
ほかにもさまざまな助成制度が設けられていますから、どのサービスを受けるのがよいか、ケアマネジャーとしっかり相談するのがよいでしょう。
こうした介護保険サービスの仕組みをざっくりと知っておくと、何をしてもらえて、何をしてもらえないかがわかるので、不安もやわらぐと思います。ご自分やご家族がどんなサービスを受けられるのかを知っておくことも、最期の時間をどう過ごすかを決めるための大事なポイントになります。
また、介護保険サービスは基本65歳以上の方が対象ですが、がん終末期の方など国の定めた16の病気に該当される方については、40~65歳未満の方でも利用できます。
日本の医療保険・介護保険はそれなりに手厚い制度だと思います。
制度は多少わかりにくい部分もありますが、地域包括支援センターなどで相談すれば、丁寧に教えてもらえます。
もし不安があったら、一人で悩まず、あきらめず、誰かに相談してください。必ず、道が開けます。
■いちばん大切なのは「どうしたいか」の意思決定
「在宅医療は、家に来てもらうのだから、余計にお金がかかるでしょ?」と、お金持ちしかできないイメージがあった方もいらっしゃるかもしれません。ですが、タクシー代や、付き添う方の稼働、病院の診療や会計の待ち時間など、通院の際にかかる経済的・時間的コストと比較して高いと捉えるかは個人の価値観だと思います。
また、医療保険では「高額療養費制度」、介護保険でも「高額介護サービス費」の制度があり、収入に応じて自己負担額の減額がされています。
そして、生活保護の制度もあります。生活保護の場合は、病状によっては、在宅医療が認められない場合もありますので、もし、生活保護で在宅医療を検討する場合は役所に必ずご相談ください。
何よりもお金のことが心配だという方もいらっしゃるかもしれません。でも安心してください。お金の面でも、制度をしっかり使えば、「貯金なんてほとんどないよ」というおひとりさまでも、在宅死は可能です。
ですから、まずは「何を大切にしてどう最期を過ごしたいか」という、ご本人とご家族の価値観による意思決定がやはりいちばん大切なことです。
中村 明澄
在宅医療専門医
家庭医療専門医
緩和医療認定医
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