「介護のために仕事を辞める」どうして問題なのか?【在宅医が解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

在宅医療や在宅ケアを考えるとき、「ご本人がどう過ごしたいか」、そして「ご家族がどう支えていきたいか」が大切だといいます。介護で支える家族側の人生も大切にすべきだと在宅医は指摘します。※本連載は中村明澄著『「在宅死」という選択』(大和書房)より一部を抜粋し、再編集した原稿です。

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「介護をするために仕事を辞める」バカな理由

■介護する側の人生も考える

 

在宅医療や在宅ケアを考えるとき、「ご本人がどう過ごしたいか」そして「ご家族がどう支えていきたいか」が大切と、ご本人の望みや人生を中心にお話してきました。ですが、ご本人の人生と同じぐらい大切なのが、ご家族の人生です。

 

つらいことではありますが、現実には、ご本人が最期を迎えられたあとも、残されたご家族の人生は続きます。そのご家族それぞれの人生もとても大切で、決して忘れてはいけないことです。目の前のことで精一杯になるのは当然ですが、「今」の過ごし方を考えるときに、ぜひその「あと」のご家族の過ごし方も視野にいれていただきたいと思っています。

 

在宅医療や在宅ケアが必要になったとき、大切なのは、必ずしもご家族が直接的に介護に関わることだけではありません。「ご自宅で過ごしたい」を支えるのにも、さまざまなやり方があります。病気が同じであっても、患者さんの性格や病気の受け止め方、また、ご家族の環境などで、選択はそれぞれ変わってきますし、二つとして同じ選択はありません。大事なのは、個々人に合ったセッティングなのです。

 

そのためにも、介護される方の希望と、介護する側の人生の両方を大切にしながら、一緒に過ごす時間がお互いにとって「いい時間」になる方法を考えていただきたいと思います。

 

■介護のために仕事は辞めない

 

私はときどき、企業に出向いて介護について講演をさせていただく機会があるのですが、「支えるご家族が、介護のために仕事を辞めることは、できるだけ避けてください」と必ずお伝えしています。経済的に厳しいというのももちろんありますが、支えるご家族側の人生も大切にしていただきたいからです。

 

介護が必要な状況に直面して「介護の担い手が自分しかいない、とりあえず仕事を辞めれば何とかなる」と思うのは絶対に避けたいことです。とりあえず仕事を辞めても、どうにもなりません。自分が直接的に手を出して介護をすることだけが介護ではありません。仕事を続けて金銭的に少し余裕がでれば、サービスの選択肢もさらに広がります。まずは仕事をしながら介護を両立できる方法を考えてほしいのです。

 

仕事と介護の両立は無理と思われがちですが、まったくそんなことはありません。もちろん大変であることは否めませんが、在宅医療と在宅ケアを利用しながら両立は十分に可能です。訪問看護や訪問介護、デイサービス、ショートステイなど様々な介護保険サービスをうまく組み合わせて、フルタイムで働きながら介護を継続されている方はたくさんいます。

 

保育園を利用して子育てと仕事を両立している方がたくさんいるように、介護と仕事を両立している方は大勢いるのです。そういう人があまりいないように見えるかもしれませんが、直面している方は、それをただ周囲に話していないだけです。悩んだり困ったりしている方は職場にも意外といるはずです。勇気をもって職場の人に自身の介護のことを話してみるのも、介護を乗り切る大きな一歩になるはずです。

 

在宅医療専門医
家庭医療専門医
緩和医療認定医

2000年東京女子医科大学卒業。国立病院機構東京医療センター総合内科、筑波大学附属病院総合診療科を経て、2012年8月より千葉市の在宅医療を担う向日葵ホームクリニックを継承。2017年11月より千葉県八千代市に移転し「向日葵クリニック」として新規開業。訪問看護ステーション「向日葵ナースステーション」、緩和ケアの専門施設「メディカルホームKuKuRu」を併設。緩和ケア・終末期医療に力をいれ、年間100人以上の患者の方の看取りに携わっている。病院、特別支援学校、高齢者の福祉施設などで、ミュージカルの上演をしているNPO法人キャトル・リーフも理事長として運営。著書に『「在宅死」という選択 納得できる最期のために』(大和書房)がある。

著者紹介

連載「在宅死」という選択で自分らしい生き方と逝き方を探る

「在宅死」という選択~納得できる最期のために

「在宅死」という選択~納得できる最期のために

中村 明澄

大和書房

コロナ禍を経て、人と人とのつながり方や死生観について、あらためて考えを巡らせている方も多いでしょう。 実際、病院では面会がほとんどできないため、自宅療養を希望する人が増えているという。 本書は、在宅医が終末期の…

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