「胃ろうはしちゃいけないと思って…」娘が下した仰天の選択【在宅医が解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

積極的治療をやめる、延命治療を選択しない。どちらも死を意味します。しかし、死を受け入れることで、自分らしく過ごせる貴重な時間を手にすることができると在宅医はアドバイスします。※本連載は中村明澄著『「在宅死」という選択』(大和書房)より一部を抜粋し、再編集した原稿です。

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延命治療の何が問題なのか?

■そもそも延命治療って何だろう?

 

医師の使命の一つは、病気を治し、命を救うことです。ある意味、医師の行う治療はすべて延命治療とも言えるかもしれません。医師は、できるだけ命を永らえるよう最善を尽くすことを学び実践してきています。

 

心肺停止は、命の終わりを意味しますが、心臓マッサージや人工呼吸などを行う心肺蘇生によって、救命できる可能性のある状態でもあります。

 

たとえば、道端で突然倒れて心肺停止した人には、迷わず心肺蘇生を行うでしょう。不整脈などで一時的に心臓が止まったとしても、その場で心肺蘇生を行えば救命でき、社会復帰ができる可能性も十分にあります。

 

けれども、終末期の患者さんが心肺停止したときにはどうでしょうか。心肺蘇生しても、残念ながら命が戻ってくることはまずありません。むしろ、心臓マッサージによって肋骨が折れてしまうなど、ご本人を傷つけることにもなりかねません。

 

そのため最近では、「終末期の場合には心臓マッサージや人工呼吸は行わない」という選択をご本人やご家族が事前に行うことができ、希望されない方が増えています。

 

■延命治療はしないはずが……

 

ただ、むずかしいのは「延命治療」という言葉の範囲です。

 

食事がとれなくなったとき、栄養や水分を補給する方法として、点滴や胃ろう(おなかに小さな穴をあけて直接胃に栄養を入れる栄養投与の方法)などがあります。このような人工栄養も延命治療の一つになります。

 

先日、お母さまを在宅で介護している娘さんが私のところにいらして、こんなふうにお話ししていました。

 

「以前から母は、延命はしないと決めていたので、胃ろうはしちゃいけないと思って、点滴にしました」

 

他に「胃ろうは延命になるから、鼻から管を入れてもらいました」という方もいました。

 

「胃ろうは延命でよくない」というイメージが先行しているのか、やや混乱が生じているように思います。延命という点において、胃ろうも鼻からの管も点滴も、方法が違うだけで同じ意味になります。

 

胃ろうも点滴も、決して悪いことではありません。ですが、胃ろうや鼻からの管、点滴などで人工栄養を開始した場合、「やっぱりやめます」とあとから中止するのは簡単なことではないことを知っておく必要があります。命を支えている人工栄養をやめるというのは、人工呼吸器のスイッチを切ることと同じ意味合いになるのです。ですから、やめるかもしれないけど「とりあえず」で始めることは絶対にお勧めしません。

 

人工栄養を行い続けることが、ご本人やご家族にとってどうかということを始める前にしっかり考えておく必要があります。

在宅医療専門医
家庭医療専門医
緩和医療認定医

2000年東京女子医科大学卒業。国立病院機構東京医療センター総合内科、筑波大学附属病院総合診療科を経て、2012年8月より千葉市の在宅医療を担う向日葵ホームクリニックを継承。2017年11月より千葉県八千代市に移転し「向日葵クリニック」として新規開業。訪問看護ステーション「向日葵ナースステーション」、緩和ケアの専門施設「メディカルホームKuKuRu」を併設。緩和ケア・終末期医療に力をいれ、年間100人以上の患者の方の看取りに携わっている。病院、特別支援学校、高齢者の福祉施設などで、ミュージカルの上演をしているNPO法人キャトル・リーフも理事長として運営。著書に『「在宅死」という選択 納得できる最期のために』(大和書房)がある。

著者紹介

連載「在宅死」という選択で自分らしい生き方と逝き方を探る

「在宅死」という選択~納得できる最期のために

「在宅死」という選択~納得できる最期のために

中村 明澄

大和書房

コロナ禍を経て、人と人とのつながり方や死生観について、あらためて考えを巡らせている方も多いでしょう。 実際、病院では面会がほとんどできないため、自宅療養を希望する人が増えているという。 本書は、在宅医が終末期の…

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