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1. オフィス拡張移転DIの低下にいったん歯止め
新型コロナウイルス感染拡大の影響によりオフィス市況は調整局面に入り、不透明感の強い状況が続いている。そこで本稿では、オフィス拡張移転DIをもとに、企業のオフィス移転動向を確認する。オフィス拡張移転DIは三幸エステートとニッセイ基礎研究所がオフィス移転の成約データをもとに共同で作成し、0%から100%の間で変動し、基準となる50%を上回ると企業の拡張意欲が強いことを表し、50%を下回ると縮小意欲が強いことを示す指標である。
東京都心部のオフィス拡張移転DIは、オフィス市況が活況であった2019年は70%台で推移していた[図表1]。
2018年以降、新築オフィスビルの大量供給が続いたにもかかわらず、こうした企業の旺盛なオフィス拡張意欲がオフィス床の大量供給を吸収し、空室率は2019年1月に初めて1%を下回り、その後もタイトな需給バランスが継続した。
しかし、2020年にコロナ危機が訪れると、オフィス拡張移転DIは2020年第1四半期の69%から2020年第4四半期の51%へと急低下した。空室率についてもその後やや遅れて上昇に転じ、2020年末には2.36%へ上昇した( ボトム対比+1.57%)。
2021年第1四半期と第2四半期のオフィス拡張移転DIは53%となり、拡張と縮小が均衡する水準で横ばいに転じた。昨年来の低下にいったん歯止めがかかる一方で、オフィス床解約の影響が大きく空室率の上昇が続いており、9月末時点では4.48%となった(昨年末比+2.12%)。