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要旨
2020年前半の新築マンション市場では、多くの人が購入を見送ったが、2020年後半以降の発売戸数は徐々に回復し、最近では在宅勤務の広がりから自宅の居住環境や作業環境が重視されるなど、マンション需要は大きく回復した。首都圏の初月契約率は、2021年1月以降68%から76%で推移しており、現在は好調といって良く、価格も上昇傾向である。
しかし、エリア別の動向には違いが生じている。2019年の水準を回復していないエリアでは、コロナ禍に関係なく、元々2019年末から減速傾向が強かったと思われる。平均発売価格の上昇幅が大きいエリアでは、供給面からの一時的な価格上昇ではなくエリア全体の価格水準が上方修正されている可能性が高い。また、「東京23区」と「千葉県その他」はコロナ禍によるスペース拡大等の需要増を受けて物件取得競争による価格上昇があったとみられるが、2021年半ばでは落ち着いている模様だ。「東京23区」では既にかなり高水準の価格となっており、そのエリアで購入希望ではあるものの、収入面で購入できなくなり、需要が低迷してきている可能性がある。
エリア別の動向に差が生じた原因の一つに、コロナ禍の世帯年収への影響が考えられる。コロナ禍下では、世帯年収(2020年)が低いほど、世帯生活の程度がコロナ禍前より「低下した」と回答している。2020年の年収は、特に時間外手当とボーナスの減少が大きく、借入可能額の減少を通じて価格水準が4000万円半ばのエリアの価格を停滞させていると推定される。また、2021年の時間外手当やボーナスは2019年の水準には戻っておらず、今年の価格動向が下落となっているエリアについては、来年も価格と売行きが停滞する可能性があるのではないだろうか。
とはいえ、新築マンションの価格の大きな下落は、バブル崩壊のあった1990年から1995年ごろなど限られた期間でしか起こっておらず、今後も大きな価格下落は考えにくい。今後も新築マンションは、マンション販売業者が供給量を減らして価格を維持していく可能性が高い。従って、全体的な傾向としては、首都圏新築マンションの価格は、当面は引き続き緩やかに価格上昇が続き、高い水準が維持されていくと思われる。まずは、マンション需要が一旦落ち着くと予想される2022年4月以降の動向に注目したい。