成約データで見る東京都心部のオフィス市場動向(2021年上期)-エリア別・業種別・ビルクラス別に見た「オフィス拡張移転DI」の動向

成約データで見る東京都心部のオフィス市場動向(2021年上期)-エリア別・業種別・ビルクラス別に見た「オフィス拡張移転DI」の動向
(写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、ニッセイ基礎研究所が2021年11月9日に公開したレポートを転載したものです。

3. 業績悪化を理由とした縮小移転は昨年で一巡か

東京圏におけるオフィス拡張移転DIを業種別に比較すると、縮小移転の理由が変化してきていることが読み取れる。図表3は、横軸に売上高の前年からの変動を、縦軸にオフィス拡張移転DIを示している。

 

[図表3]業種別のオフィス拡張移転DI vs. 売上高の変動(前年比)(東京圏)
[図表3]業種別のオフィス拡張移転DI vs. 売上高の変動(前年比)(東京圏)

 

2020年は、両者の相関が高く、業績不振の業種を中心に縮小移転が増加し、オフィス拡張移転DIが低下した。具体的には、売上高の減少率が大きい「宿泊業・飲食サービス業」や「教育・学習支援業」のオフィス拡張移転DIが低いのに対して、売上高の減少率が小さい「不動産業・物品賃貸業」や「その他サービス業」、「情報通信業」のオフィス拡張移転DIは総じて高い傾向が見られた。

 

しかし、2021年上期は、売上高の変動とオフィス拡張移転DIに相関関係は見られない。オフィス拡張移転DIが高い業種として、「不動産業・物品賃貸業」や「建設業」が挙げられる一方で、「情報通信業」や「製造業」の低下が目立つ。IT系や電機メーカーの一部の企業では、オフィス戦略を見直し、移転や解約などによりオフィス床を削減する方針を発表している。このようなオフィス拡張移転DIの変化は、業績悪化を理由とした縮小移転の動きが昨年で一巡するとともに、コロナ禍を起点とした各企業の本格的なオフィス再構築の動きが、顕在化し始めていることを示唆しているのではないだろうか。

 

次ページ3.Aクラスビルのオフィス拡張移転DIが大きく低下し50%を下回る

本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

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