(※写真はイメージです/PIXTA)

マンション管理組合は面倒くさいから、かかわりたくない――。そう思って丸投げしていたら、とんでもないしっぺ返しを食らうかもしれません。実は、不正を働くマンションの管理責任者が増えています。※本連載は、松本洋氏の著書『マンションの老いるショック!』(日本橋出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

マンション管理費の横領事件が続発している

■マンション管理組合役員による事件

 

テレビ、新聞などでマンションの理事等役員の横領事件が時々報道されますが、報道されるのは、ほんの一部で、時効により裁判が出来なかったケースや世間体を考えてことを大きくしたくないなどの理由から表沙汰になっていない横領事件も多くあるようです。たかが、管理組合の横領事件と侮ってはいけません、億単位で被害にあわれた管理組合も結構あります。

 

新潟県の大型リゾートマンションでは管理組合前理事長が約16年間にわたり、組合の管理費など総額約11億円を着服していた事件は業界では有名です。

 

横領の手口としては、前管理組合理事長名の管理組合口座から自分の口座に送金する方法で着服し、それが発覚することを隠すために会計の監査の時に銀行から提出される残高証明書を改ざんしていたということです。

 

この前理事長は、公認会計士の資格も保有していることから総会で選任された時には組合員の誰もが信頼していたと考えますが、まさかこのような事件になるとは誰も思っていなかったと思います。

 

■理事長・会計監査担当役員にも賠償命令

 

管理組合の会計担当理事が横領して、横領していない理事長、監事の個人責任を認める判決が出された事例もあります。

 

マンションの会計担当が10年もの長期に渡り総額1億円以上もの着服をし、その間、預金通帳の確認などを行っていれば着服を防げたとして、当時の理事長と会計監査担当役員に464万円もの善管注意義務違反により損害賠償が認められたというものです。(東京高裁で判決は確定)このマンションは戸数40戸弱,着服期間は1998年から2007年まで,当時は自主管理であり,印鑑と通帳は着服していた会計担当役員が所持していたとのこと。自らワープロで作成した残高証明書で発覚を免れ,通帳の写しや原本のチェックはされていなかったとのことです。

 

判決では「預金通帳をチェックしていれば着服の事実を把握でき損害を回避できた」と指摘され着服には関与していなかったにも拘わらず、理事長と会計監査担当役員に損害賠償責任が認められたとのこと。

 

古いマンションでは、通帳と銀行届出印を理事長や一部の理事が一緒に保管しているマンションが多いのでこのような事件が発生しています。

 

通帳と印鑑は、同じ管理組合の役員が保管していると「つい、でき心で……」横領事件になる可能性があります。

 

■悪徳プロの理事長

 

横領は、犯罪ですが犯罪にならないように巧妙に、マンションの管理費、修繕積立金を食いものにしている理事長もおります。

 

その手口としては、50~70戸くらいの築年数10年とか23年位の中型マンションの一部屋を購入し組合員として管理規約に基づいてお金儲けをたくらむのです。

 

マンション購入前に、総会の議事録を確認して、実際に総会に出席する組合員(議場出席者)が少なく、委任状や議決権行使書で決議されるマンション管理に関心があまりない高くないマンションをねらって購入します。そして、滞納状況や修繕積立金の額等も予め調査します。財務状況が良いマンションを選びます。

 

築10年とか23年、35年の中古のマンションは、大規模修繕工事を目前に控えていますので、マンション管理に関心の低いマンションでは、理事長に立候補する組合員は少ないことが多いので、立候補するとたいてい理事長に就任することができます。

 

理事長になって、大規模修繕工事の提案をして、自分の知り合いの建設会社や縁故関係のある大規模修繕工事業者に修繕工事を発注してそこからリベートをもらってお金儲けをするわけです。

 

中型マンションの大規模修繕工事の費用は数億円になりますので、工事金額の2割がバックマージンとしても大きな金額になります。その大規模修繕工事が終わるとマンションがきれいになって売りやすくなるので、売却してまた大規模修繕工事間近の管理に関心の薄いマンションを探してそれを購入して同じ方法でお金儲けします。

 

これを、『プロの理事長』と呼んでいます。最近は、プロの理事長のほかに、大規模修繕工事業者が自分の会社の社員に大規模修繕工事間近のマンションを購入させて理事長にし、自社に大規模修繕工事を誘導する業者もあるようです。

 

この方法では、総会で規約に基づいて手続きを行い上程して総会承認を受ければリベートをもらったことが発覚しなければ濡れ手に粟状態です。

 

このように、マンション管理組合員の一人一人がマンション管理に関心を持たないといいように管理組合の大切な資金が知らない間に吸い取られてしまいます。

 

あるマンション管理に関心の薄いマンションで、10年間理事長を務めた理事長が予算に理事長の10年間の慰労金として800万円を上程して総会決議された事例があります。

 

このマンションでは総会が終了してしばらくしてから、理事長の慰労金800万円が発覚してトラブルになりましたが、総会で出席者の過半数の賛成を得て可決されていたのであとの祭りです。

 

この場合には、1/5の組合員による総会招集権を行使して臨時総会を開催して、慰労金を撤回することも可能かと思われます。

 

 

松本 洋
松本マンション管理士事務所 代表

 

 

マンションの老いるショック!データから学ぶ管理組合運営

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松本 洋

日本橋出版

分譲マンションは現在、「区分所有者の老い」「建物設備の老い」という二つの老いの問題を抱えています。 本書では、国土交通省から公表されているデータや、筆者のマンション管理士としての経験から得た知識を基に「マンシ…

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