1年ほど家賃を滞納している74歳男性。督促をしても喚き散らす始末で、家主も実兄も困り果て…。「強制執行」までの経緯を、OAG司法書士法人代表・太田垣章子氏が解説します。 ※本記事は、書籍『老後に住める家がない!』(ポプラ社)より一部を抜粋・編集したものです。
呼び鈴を鳴らすと…「帰れ!」部屋から現れた姿に呆然
さっそくお兄さんと一緒に、山沖さんのところに行ってみることにしました。この日も快晴でしたが、山沖さんの部屋の前だけは洗濯物が干されていません。他3軒の皆さんが「毎日こんなに洗濯されているのですか」と驚いてしまうほど干されているので、まるで山沖さんのお部屋が空き家のように見えてしまいます。
お兄さんが呼び鈴を鳴らしました。前回のように反応はありません。
「政則、いるんだろう? 話をしよう」
そう呼びかけると、今まで沈黙していた山沖さんが爆発したのです。
「帰れ! お前には関係ない」
お兄さんも食い下がります。
「関係ないことないだろう? 俺はお前の連帯保証人なんだぞ。金払えって言われてるんだぞ。関係なくないんだよ。出てこい!」
その大きな声に、先日の左隣の女性も部屋から出て様子を見守ります。
「出てこいよ、ドア開けろよ」
そう言いながら、お兄さんがドアをがちゃがちゃし始めたその時、ドアが中から勢いよく開けられました。
仁王立ちになった山沖さんは、お風呂に入ってないのでしょうか。何日も着替えてないような、汗で汚れたシャツを着て、白髪交じりの髭も髪の毛も伸び放題の姿です。ぷんと酸っぱい臭いがします。
「帰れって言ってんだ!」
今にも殴りかかりそうな勢いでした。
その迫力に皆が後ずさりした瞬間、ドアはまた大きな音を立てて閉じられたのです。
司法書士、賃貸不動産経営管理士、合同会社あなたの隣り代表社員
司法書士、賃貸不動産経営管理士、合同会社あなたの隣り代表社員。30歳で生後6か月の長男を抱えて離婚、働きながら6年の勉強を経て2001年に司法書士試験合格。2006年に独立、2012年に事務所を東京へ移転し、2024年5月よりコンサルティングと情報発信を軸に現職へ。家主側の訴訟代理人として家賃滞納の明け渡し手続きを延べ3,000件近く担当し、現場重視で滞納者の再出発にも伴走する“賃貸トラブル解決のパイオニア”として知られる。「住まいは生きる基盤」を掲げ、“人生100年時代における家族に頼らないおひとりさまの終活”を提言。全国賃貸住宅新聞での長期連載をはじめ、現代ビジネスなど各種媒体に寄稿し、年間60回超・累計700回超の講演で実務と制度の接点をわかりやすく伝えている。著書に『家賃滞納という貧困』、『老後に住める家がない!』、『不動産大異変』、『あなたが独りで倒れて困ること30』(すべてポプラ社)、『死に方のダンドリ』(共著、ポプラ社)などがある。
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