家主は何度か督促に行くも、いつも二人に会えなかった。(※写真はイメージです/PIXTA)

家賃を滞納するようになった2人暮らしの父子。「強制執行」までの経緯を、OAG司法書士法人代表・太田垣章子氏が解説します。 ※本記事は、書籍『老後に住める家がない!』(ポプラ社)より一部を抜粋・編集したものです。

自営業の住人「体調が悪くて」家賃を滞納するように…

69歳のお父さんと、まだ20代の息子さんとの二人住まいでした。もともとは奥さんも含めての三人家族でしたが、離婚して二人での生活になったようです。

 

お父さんの日下博さんは、ご自身で内装業を営んでいます。そのため道具がいっぱい積まれた車のために、駐車場も借りています。20代の徹さんは運転免許を持っていないのでしょうか。車を動かしている姿は、見たことがありません。内装業に興味を持てなかったのか、徹さんは家業を継がず、駅前の飲食店でアルバイトをしていました。

 

博さんは、穏やかで口数は少なく、いつも下を向いて歩いて元気がありません。

 

「なんだか体調が悪くてね」

 

夏の盛りにばったり出会った家主が声をかけると、弱々しい声が返ってきました。

 

自営業は、体調の悪さがすぐに家計に響きます。博さんの家賃の支払いが、少し遅れるようになってきました。払ったり払われなかったり。8万ちょっとの支払いが、分割で払われることもありました。博さんの売り上げと、徹さんの収入を合算すれば、親子二人が払っていけない金額ではありません。

 

家主は何度か督促に行きましたが、いつも二人に会えません。呼び鈴を鳴らしても、反応がないのです。仕方なく督促状をドアに挟みこむのですが、連絡が来ることはありませんでした。

 

秋口になると、博さんの車が動かない日が多くなりました。そして同時に、家賃も全く払われなくなっていったのです。ついに滞納額は20万円を超えるようになりました。博さんは体調を崩して、家で横になっているのでしょうか。車は薄(うっす)ら埃を纏(まと)うようになりました。

 

家主は家賃よりも博さんの体調が気になって、何とか息子の徹さんと連絡をとろうとアルバイト先の飲食店に行ってみました。しかし残念ながら、徹さんはすでに退職済み。どこか別のところで働き始めたのでしょうか。ますますこの親子が気になりますが、連絡が取れないために前に進めない日が続きました。

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老後に住める家がない!

老後に住める家がない!

太田垣 章子

ポプラ社

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