社会の高齢化とともに深刻さを増す、家賃滞納問題。ここでは、「千葉で理容店を営む80代夫婦」の家賃滞納トラブルについて、OAG司法書士法人代表・太田垣章子氏が解説します。 ※本記事は、書籍『老後に住める家がない!』(ポプラ社)より一部を抜粋・編集したものです。
千葉の理容店…80代の夫婦が家賃300万円超を滞納
◆理容店の閉店
千葉の中心からずいぶん離れた駅のすぐ前に、50年以上夫婦で営んでいる理容店がありました。
古い町並みではありますが、若い人も移住してきて、少し活気がでてきたエリアです。理容店の物件は、自宅兼店舗。底地はトータル約40坪の広さで、駅前のいい位置を押さえていました。
新宿に住む家主は、この理容店の滞納に頭を抱えていました。店舗と住居、合わせて家賃9万円。駅前にしては破格値ですが、時代の流れで値上げせずにきてしまったのです。それなのにここ数年滞納気味になり、すでにその額は300万円を超えようとしていました。
なぜここまで滞納額が、増えていってしまったのでしょう。
場所的なことが、理由のひとつでした。理容店という商売をしている関係上、督促の電話をしても「忙しいから」と対応してもらえず、かと言って新宿から2時間近くの時間をかけて督促に行くのも憚られたのです。管理会社に管理を任せる方法もあったのですが、今までずっと自主管理をしていたのでそのままになってしまっていました。
賃借人の夫婦もすでに80代。家主も同じような年齢で、お互いがのらりくらりしている間に月日が経ってしまったということでしょう。もはや当事者では解決できそうになく、訴訟をしてくれとご依頼がありました。
司法書士、賃貸不動産経営管理士、合同会社あなたの隣り代表社員
司法書士、賃貸不動産経営管理士、合同会社あなたの隣り代表社員。30歳で生後6か月の長男を抱えて離婚、働きながら6年の勉強を経て2001年に司法書士試験合格。2006年に独立、2012年に事務所を東京へ移転し、2024年5月よりコンサルティングと情報発信を軸に現職へ。家主側の訴訟代理人として家賃滞納の明け渡し手続きを延べ3,000件近く担当し、現場重視で滞納者の再出発にも伴走する“賃貸トラブル解決のパイオニア”として知られる。「住まいは生きる基盤」を掲げ、“人生100年時代における家族に頼らないおひとりさまの終活”を提言。全国賃貸住宅新聞での長期連載をはじめ、現代ビジネスなど各種媒体に寄稿し、年間60回超・累計700回超の講演で実務と制度の接点をわかりやすく伝えている。著書に『家賃滞納という貧困』、『老後に住める家がない!』、『不動産大異変』、『あなたが独りで倒れて困ること30』(すべてポプラ社)、『死に方のダンドリ』(共著、ポプラ社)などがある。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載GGO大ヒット連載ピックアップ~『老後に住める家がない!』