(※写真はイメージです/PIXTA)

古いアパートを取り壊すための立ち退き交渉には、残念ながらトラブルがつきものです。ここでは、家主、そして司法書士をも憔悴させた事例について、OAG司法書士法人代表・太田垣章子氏が解説します。 ※本記事は、書籍『老後に住める家がない!』(ポプラ社)より一部を抜粋・編集したものです。

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    「顔を合わすのも嫌だ」最悪な関係の家主と女性入居者

    建物は未来永劫建っている訳ではありません。どこかで必ず取り壊す時期が来るのです。

     

    古い建物は設備も古く、そしてかなりの確率で高齢者が住んでいます。計8戸の部屋を持つ築60年の木造アパートにも、たった1組の高齢者親子だけが住んでいました。

     

    2年前から始めた立ち退き交渉で、他の7戸はすべて退去済み。倒壊するのが怖いので、早く取り壊したいのに立ち退いてもらえない、そんな悩みで家主は相談に来られました。物件はターミナル駅から徒歩7分の好立地。周辺には新しいマンションが立ち並ぶ中、ひときわ廃墟感が漂う全貌です。

     

    「前の道路は人の通りも多く、建物が倒壊でもして迷惑かけたらと思ったら、夜もまともに寝られません」

     

    最後に残った張田洋子さん(73歳)親子のために、家主は焦燥しきっていました。

     

    資料を見せてもらうと、2年前の最初のアプローチで張田さんの機嫌を損ねてしまい、以来まったく話ができなくなったようです。他の方々は順次退去した中で、張田さんは月額7万円の家賃すら、法務局に供託するようになりました。家主と張田さんは隣同士で住んでいるのに「顔を合わすのも嫌だ」。そこまでの感情の縺れ(もつれ)を生んでしまったようです。

     

    なぜそこまで張田さんは、このアパートから退去したくないのでしょうか。これは退去したくない訳ではなくて、次の転居先を見つけられないからなのではないでしょうか。

     

    張田さんはご主人とともに、このアパートで暮らし始めて50年弱。この物件で二人の子どもを産み育て、そして6年前にご主人が亡くなりました。お嬢さんは結婚して独立。40代の息子さんと一緒に住んでいます。

     

    どうやらこの息子さんは、何らかの仕事はしているものの、定職ではなさそうです。ほとんど姿も見かけないということでした。張田さんの僅かな年金が、この親子の財源なのでしょう。しかしながら張田さんが手にする遺族年金は、それほど高額ではないはずです。余計に転居先が見つけにくいということでしょうか。

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    老後に住める家がない!

    老後に住める家がない!

    太田垣 章子

    ポプラ社

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