古いアパートの住人と家主の間には、家賃滞納、立ち退き交渉といったトラブルが残念ながらつきものです。ここでは、「お金があるのに家賃を払わない」高齢者について、OAG司法書士法人代表・太田垣章子氏が解説します。 ※本記事は、書籍『老後に住める家がない!』(ポプラ社)より一部を抜粋・編集したものです。
「お金があるのに出さない」高齢者があまりに多い実態
高齢者になると頼れるのは「お金だけ」と思うのか、私の叔母はお金をティッシュに包んでどこかに隠してしまい「泥棒に入られた」と大騒ぎを繰り返していました。そんな叔母は若い頃、びっくりするくらいお金に頓着しない人でした。
70歳を過ぎ、家中にお金を隠し、外出しても財布にお金が入っているのに出さない、いつもお金でトラブルになる、そんな叔母になってしまったのです。当時まだ若かった私はその真意が分からず、歳をとると人は性格が変わるのかな、その程度にしか考えていませんでした。
ところが賃貸トラブルの現場に身を置くようになると、ここで出会う高齢者も叔母との共通点がたくさんあります。お金があるのにお金を出さなかったり、お金のコントロールができていなかったり。日本人は長くお金の管理を人に任せるということをせずにきた文化がありますが、これには限界があるのではないかと思うようになりました。
年金だけでは、老後を過ごせない時代。2000万円問題が、世間を震撼させました。社会保障額はどんどん増える中、ますます高齢者は急増していきます。しかもこれからは高度成長を経験した高齢者と違い、資産をさして持たないグループの増加です。
滞納している高齢者と話をすると、解決策を見つけられず出口のない迷路に入り込んでしまった気になってしまうのです。
OAG司法書士法人代表 司法書士
株式会社OAGライフサポート 代表取締役
30歳で、専業主婦から乳飲み子を抱えて離婚。シングルマザーとして6年にわたる極貧生活を経て、働きながら司法書士試験に合格。
登記以外に家主側の訴訟代理人として、延べ2500件以上の家賃滞納者の明け渡し訴訟手続きを受託してきた賃貸トラブル解決のパイオニア的存在。
トラブル解決の際は、常に現場へ足を運び、訴訟と並行して賃借人に寄り添ってきた。決して力で解決しようとせず滞納者の人生の仕切り直しをサポートするなど、多くの家主の信頼を得るだけでなく滞納者からも慕われる異色の司法書士でもある。
また、12年間「全国賃貸住宅新聞」に連載を持ち、特に「司法書士太田垣章子のチンタイ事件簿」は7年以上にわたって人気のコラムとなった。現在は「健美家」で連載中。
2021年よりYahoo!ニュースのオーサーとして寄稿。さらに、年間60回以上、計700回以上にわたって、家主および不動産管理会社向けに「賃貸トラブル対策」に関する講演も行う。貧困に苦しむ人を含め弱者に対して向ける目は、限りなく優しい。著書に『2000人の大家さんを救った司法書士が教える 賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド』(日本実業出版社)、『家賃滞納という貧困』『老後に住める家がない!』(どちらもポプラ新書)がある。
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