1年ほど家賃を滞納している74歳男性。督促をしても喚き散らす始末で、家主も実兄も困り果て…。「強制執行」までの経緯を、OAG司法書士法人代表・太田垣章子氏が解説します。 ※本記事は、書籍『老後に住める家がない!』(ポプラ社)より一部を抜粋・編集したものです。
「このままじゃ断行厳しいかな」執行官は呟き…
開錠されドアが開くと、山沖さんは玄関に立っていました。遠くからの様子ですが、それでも元気がないことは明確です。
「家賃払ってないからね、明け渡しの手続きになっていますよ。分かりますか?」
執行官が優しく言っても、さして反応がありません。
「来月の5日に荷物を完全に撤去するからね。それまでに引っ越し先を見つけて出てくださいね。ここに紙貼っておくから。役所に相談したらいいと思いますよ」
執行官は荷物を運び出す断行の日時が記載された公示書を、ドアの裏側に貼りました。今後の流れも説明されているのですが、山沖さんは聞いているのかいないのか、ただ公示書を眺めているだけです。前回より髪の毛も髭も伸び、同じ服なのでしょうか、さらに汚れた様相で生気がありません。ご飯をきちんと食べていないのか、かなり痩せた印象も受けました。
説明が終わり、ドアを閉めたところで執行官が呟きます。
「これ……このままじゃ断行厳しいかな。ちょっと検討してみて」
司法書士、賃貸不動産経営管理士、合同会社あなたの隣り代表社員
司法書士、賃貸不動産経営管理士、合同会社あなたの隣り代表社員。30歳で生後6か月の長男を抱えて離婚、働きながら6年の勉強を経て2001年に司法書士試験合格。2006年に独立、2012年に事務所を東京へ移転し、2024年5月よりコンサルティングと情報発信を軸に現職へ。家主側の訴訟代理人として家賃滞納の明け渡し手続きを延べ3,000件近く担当し、現場重視で滞納者の再出発にも伴走する“賃貸トラブル解決のパイオニア”として知られる。「住まいは生きる基盤」を掲げ、“人生100年時代における家族に頼らないおひとりさまの終活”を提言。全国賃貸住宅新聞での長期連載をはじめ、現代ビジネスなど各種媒体に寄稿し、年間60回超・累計700回超の講演で実務と制度の接点をわかりやすく伝えている。著書に『家賃滞納という貧困』、『老後に住める家がない!』、『不動産大異変』、『あなたが独りで倒れて困ること30』(すべてポプラ社)、『死に方のダンドリ』(共著、ポプラ社)などがある。
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