古いアパートを建て直したい家主。住民の立ち退きと、行方不明者への強制執行に際した切実な想いに迫る。 ※本記事はOAG司法書士法人代表・太田垣章子氏の書籍『老後に住める家がない!』(ポプラ社)より一部を抜粋・編集したものです。
有村さんと村山さん、二人は立ち退くが…
同じ頃、有村さん、続いて村山さんがそれぞれの新居に引っ越して行かれました。
「井上さんのことを目の当たりにすると、いかに自分が迷惑かけないように準備しなきゃいけないのかってことが分かったよ。部屋貸してくれる家主さんに、迷惑かけられないよね」
部屋の立ち退きで文句も言いたいところ、二人は一言も家主を責めることもせず、むしろ転居先を見つけてくれたことに感謝していました。以前にも立ち退きを経験され、高齢者の一人住まいがいかに難しいかを身をもってご存じだからかもしれません。
家主だって、絶対に貸したくない訳ではないのです。ただ若い人たちより簡単に解決できない問題が多い分、躊躇してしまうのも仕方がありません。
だからこそ借りる側も、精一杯迷惑をかけない心がけが必要ではないのでしょうか。
※本記事で紹介されている事例はすべて、個人が特定されないよう変更を加えており、名前は仮名となっています。
太田垣 章子
OAG司法書士法人代表 司法書士
司法書士、賃貸不動産経営管理士、合同会社あなたの隣り代表社員
司法書士、賃貸不動産経営管理士、合同会社あなたの隣り代表社員。30歳で生後6か月の長男を抱えて離婚、働きながら6年の勉強を経て2001年に司法書士試験合格。2006年に独立、2012年に事務所を東京へ移転し、2024年5月よりコンサルティングと情報発信を軸に現職へ。家主側の訴訟代理人として家賃滞納の明け渡し手続きを延べ3,000件近く担当し、現場重視で滞納者の再出発にも伴走する“賃貸トラブル解決のパイオニア”として知られる。「住まいは生きる基盤」を掲げ、“人生100年時代における家族に頼らないおひとりさまの終活”を提言。全国賃貸住宅新聞での長期連載をはじめ、現代ビジネスなど各種媒体に寄稿し、年間60回超・累計700回超の講演で実務と制度の接点をわかりやすく伝えている。著書に『家賃滞納という貧困』、『老後に住める家がない!』、『不動産大異変』、『あなたが独りで倒れて困ること30』(すべてポプラ社)、『死に方のダンドリ』(共著、ポプラ社)などがある。
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