古いアパートを建て直したい家主。住民の立ち退きと、行方不明者への強制執行に際した切実な想いに迫る。 ※本記事はOAG司法書士法人代表・太田垣章子氏の書籍『老後に住める家がない!』(ポプラ社)より一部を抜粋・編集したものです。
門前払いを避けるべく、司法書士がアタックした先は
幸い、お二人がお住まいの場所は、数名の大地主さんが賃貸物件をたくさん持っているエリアでもありました。同時に治安も良く、一度住みだすとなかなか別の場所に転居していかないほど、人情溢れる下町の良さも兼ね備えた場所でもあります。このエリアなら、何とか新居が見つかるんじゃないか、私の心も逸ります。
きちんと家賃を支払ってくれる実績のあるこのお二人のため、新居探しが始まりました。
不動産会社に問い合わせても、きっと年齢や条件で門前払いになってしまいます。こうなれば仕方ありません。直接、家主さんにアタックしていきました。
村山さんたちは、まだお仕事をされてお元気であること。今まで一度も滞納をされたことがないということ。お人柄も温厚で、他の入居者の方々と一度もトラブルがないこと。ここは前のめりになりながらでも、一生懸命に訴えるしかありません。
するとあまりの勢いに押されたのか、家主のお一人が空いているお部屋をご紹介くださいました。残念ながらどのお部屋もそこそこ築年数が経っているので、いずれまた取り壊しの話がでるかもしれません。
「その時は、その時で考えます。とにかく今は、1日でも元気で迷惑かけないように頑張るしかないねえ」
新居の候補があることをお伝えすると、村山さんも有村さんもとりあえずホッとされた様子でした。
OAG司法書士法人代表 司法書士
株式会社OAGライフサポート 代表取締役
30歳で、専業主婦から乳飲み子を抱えて離婚。シングルマザーとして6年にわたる極貧生活を経て、働きながら司法書士試験に合格。
登記以外に家主側の訴訟代理人として、延べ2500件以上の家賃滞納者の明け渡し訴訟手続きを受託してきた賃貸トラブル解決のパイオニア的存在。
トラブル解決の際は、常に現場へ足を運び、訴訟と並行して賃借人に寄り添ってきた。決して力で解決しようとせず滞納者の人生の仕切り直しをサポートするなど、多くの家主の信頼を得るだけでなく滞納者からも慕われる異色の司法書士でもある。
また、12年間「全国賃貸住宅新聞」に連載を持ち、特に「司法書士太田垣章子のチンタイ事件簿」は7年以上にわたって人気のコラムとなった。現在は「健美家」で連載中。
2021年よりYahoo!ニュースのオーサーとして寄稿。さらに、年間60回以上、計700回以上にわたって、家主および不動産管理会社向けに「賃貸トラブル対策」に関する講演も行う。貧困に苦しむ人を含め弱者に対して向ける目は、限りなく優しい。著書に『2000人の大家さんを救った司法書士が教える 賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド』(日本実業出版社)、『家賃滞納という貧困』『老後に住める家がない!』(どちらもポプラ新書)がある。
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